人間は物事を一度記憶しても時間が経つと忘れてしまうが、何回も繰り返して覚えると記憶が定着する。単純に同じ間隔で繰り返し覚えるよりも、繰り返しの回数を重ねるごとに間隔を伸ばす間隔反復を行うと効果的に覚えることができる。「覚える」とは、短期記憶を長期記憶へ移すといえる。
繰り返しの間隔を長くした方がより効率的に記憶できる理由には諸説あるが、記憶回数が多いほど忘却曲線が緩やかになるためと言われている。下図のように、1回目の再記憶と2回目の再記憶の間隔を開けた方が日数を経過しても記憶率を高く保つことができる。
間隔反復の効果は1930年代から実験され始めたものの注目されなかったが、1970年代になってから語学学習へ応用された。
ドイツの科学記者Sebastian Leitnerが開発した語学学習システム「ライトナーシステム」では、問題をユーザーの理解度に合わせて学習箱に分類する。 ユーザーが任意の問題を回答し、正解したものを「1日おきに復習」の箱へ、連続して正解したものを「週に1回復習」の箱へ不正解のものを「毎日復習」の箱に移動する。正解率の低い問題は復習する間隔が短くなる一方、正解率の高い問題は復習する間隔が長くなる。
ライトナーシステムでは大量のカードを作成するため、労力が必要で非現実的であった。1980年代にコンピューターの利用が広まると、間隔反復ソフトウェア(spaced repetition software; SRS)の開発が行われ始めた。間隔反復ソフトウェアはユーザーが記憶するのに最適な学習量や間隔を算出する。算出するアルゴリズムにはいくつか種類があり、絶対的なものはない。
間隔反復を利用したSuperMemo
間隔反復を活用した学習・記憶ソフトウエアは複数出回っているが、中でも草分け的な存在がSuperMemoである。SuperMemoはPiotr Wozniakが自分の記憶に関する研究を元に開発した。
SuperMemoのアルゴリズムでは、忘却曲線を利用した反復間隔を算出しており、忘れた頃に復習することで効果的な記憶ができるようにしている。
オンボーディングにも応用が可能
オンボーディングも一度だけでは、ユーザーがサービスの使い方や利点といった情報を完全に覚えることは難しい。とはいえ、繰り返して情報を提示する頻度が多すぎるとユーザーに対して「しつこい」印象を与えてしまう。
間隔反復を利用して、使いこなしている機能については反復せず、使いこなせていない機能については忘れた頃に再び情報を提示することで、ユーザーに負担をかけずにサービスの使い方を覚えてもらうことができる。