段階的開示

初期段階では、適切量の情報を開示

ヒックの法則にあるように、人は提供される情報が多ければ多いほど、判断力が低下する。これは、UIのみならず、説明書や指導書、空間デザインなどにも当てはまり、それらを理解することの妨げとなる。その解決策として利用できる手法が、この段階的開示である。HCI(Human Computer Interaction)で用いられるインタラクションデザイン手法のひとつでもある。

学習意欲とデザインの関係について研究しているアメリカ人教育心理学者のJ.M.ケラーが1980年代前半に考案したARCSモデルの一環で、この用語を初めて使用した。

J.M.ケラー氏 出典:arcsmodel.com

まずは、ユーザーが必要とする、もしくは要求する情報のみを開示し、高度な機能や使用頻度の低い機能は次の段階へと譲る。ユーザーのコンテキストやニーズは様々であり、最初からそれを全て満たす必要はない。

印刷ダイアログでは、古くから段階的開示がされている。例えば、 Chromeブラウザの印刷ボックスでは、初期段階では必要最低限の機能のみが表示されており、より高度なものは「詳細設定」の中に隠れている。

2タイプの段階的開示

スマートフォンの普及により、アプリケーションだけではなくウェブサイトでも小さい画面でユーザーに複雑な各種機能やサービス内容などを理解してもらうためには、この手法が必要不可欠になっている。その際に注意すべき点は、以下の2点と言われている。

小さい画面設計の注意点

1画面目に搭載する機能や内容と、それ以降に回すものとを明確に分ける。
2画面目以降に遷移する方法を分かりやすく提示する。

原則として段階的開示を用いた画面遷移は2画面までと言われているが、入力フォームなどひとつのタスクを複数のステップに分割することができ、それをひとつずつ完了していく仕組みにおいてはその限りではない。

例えば、ホテルなどの宿泊予約サイトにおいて、宿泊先の詳細ページでは画面遷移が発生せずに1画面で価格や部屋タイプ、空室情報などのスペックが比較できる方が望ましい。しかし、そのページで予約に関するフォームまでが掲載されていると、情報過多となり判断力が鈍ることにより未理解や入力ミスを発生させる原因となる。

ステップ分割タイプの段階的開示を用いる場合は、ユーザーがステップを行き来する可能性が少ない(ステップ同士が互いに影響し合わない)タスクで行う必要がある。

ユーザーが、いつ何を必要としているかを見極める

この手法は非常に重要なものであるが、最初の画面そして、それ以降の画面で何を見せるのかを理解している必要がある。ペルソナやストーリーテリング、カスタマージャーニマップなどでユーザーを知ることも大切であるが、作成した画面でユーザビリティテストを行い、本当に求めるものは何かを見極めることも必要である。

このような調査を省いてしまうと、多くのユーザーが目的の情報にたどり着けずにフラストレーションを抱えるサイト、アプリになってしまいかねない。