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ヘーゲルの弁証法 Hegelian Dialectic

対立する2つの主張を、どちらも捨てずに次の考えへまとめ直す思考法

ヘーゲルの弁証法(Hegelian Dialectic)とは、ある考えとそれに反する考えを突き合わせることで、両方を含んだアイデアへ繋げる思考法である。

たとえば、機能を足して要望に応えたい案と、機能を減らして分かりやすくしたい案がぶつかったとする。ここで多数決を取らず、それぞれが何をしたいかを書き出す。機能を足すことで、慣れてきたユーザーにもっと利便性を提供したい。逆に機能を減らすことで、不慣れなユーザーの混乱を減らしたい。お互いの主張から、使い始めの人には少ない機能だけを見せ、使い慣れた人にはすべてを出す、というアイデアを考えることができる。

自分の案が「破綻する」ところを考える

弁証法の核は、反対意見を並べることではなく、それを手がかりに自分の案がどこで破綻するかを見つけることにある。

冒頭の例でいえば、機能を足し続けると画面は機能で埋まり、使い始めたばかりの人ほど迷うようになる。要望に応えるための案が、別のユーザーを置き去りにするところまで来る。

破綻の仕方には、次の案の手がかりが含まれている。この例で行き詰まったのは「全員に同じ画面を見せる」という前提だった。だから次の案は、足す案を捨てることではなく、見せ方をユーザーの慣れに合わせて分けることになる。

この流れは、最初の案を正(テーゼ)、破綻から出てくる考えを反(アンチテーゼ)、両方を含んだ次の案を合(ジンテーゼ)と呼んで整理されることが多い。

語源・提唱者

18世紀末の哲学には、矛盾が出た時点で議論を止める癖があった。

Immanuelイマヌエル Kantカント は、経験を超えた問いを理性だけで考えると、正反対の結論が両方とももっともらしく立ってしまうことを示した。

Georgゲオルク Wilhelmヴィルヘルム Friedrichフリードリヒ Hegelヘーゲル の狙いは、その矛盾を思考の失敗ではなく、次の考えへ進むための入口として扱えるようにすることだった。矛盾は人の頭の中だけで起きる事故ではなく、対象そのものが持っている性質だと考えた。

ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル (出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Georg_Wilhelm_Friedrich_Hegel)

これによって、対立が出たところが議論の終点ではなくなった。のちに Karlカール Marxマルクス が歴史の見方に持ち込み、さらに経営や教育、デザインの議論にも、両立しない要求をどちらも捨てずに解く型として渡っていく。広がったのは、この型が哲学に固有のものではなく、二者択一に見える場面ならどこにでも当てはまる形だったからである。

二者択一の罠

弁証法の考えを知らない場合、ぶつかった2案はどちらを取るかの勝負になる。決め手がなければ、多数決か、声の大きいほうか、立場が上のほうに寄る。そして落ちた案が守ろうとしていた条件は、そのまま議論から消える。消えた条件は、数か月後に別の不具合の形で戻ってくることが多い。

ロットマン経営大学院教授のRogerロジャー Martinマーティン は2007年の著書で、優れた経営者は対立する2つの案のどちらかを選ばないと述べた。両方の要素を含み、どちらよりも良い案を作り出す。この動きを統合思考と呼んでいる。

折衷案を「合」と呼ばない

よくある間違いは、折衷案を合と呼んでしまうところである。両方から半分ずつ削った案は、どちらの案も満たしていないことが多い。合になっているかどうかは、最初の2案が守ろうとした条件が両方とも残っているかで確かめられる。

議論が拮抗してしまう状況では「いま反対している人は、何を守ろうとしていますか」と一度聞いてみると良い。反対意見に「条件」があれば、どちらの条件も満たすアイデアが探しやすくなる。

関連用語

  • 統合思考
  • トレードオフ
  • 二律背反
  • リフレーミング

        BtoB人事業務アプリのコンサルタント→エンジニア→BtoCのWebディレクターを経て、再度BtoB業務アプリとなる物流プラットフォームのUIUXに挑戦。オンライン/オフライン双方でのBtoBUXを改善すべく奮闘中。

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