社員・顧客など企業の内外問わず、人々が企業に対して抱いているポジティブな感情のことで、近年、経営における重要な資産として注目されている。
例えば、社員や顧客が下記のような「サービスに対する好意」や「企業が無くなることへの失望感」という感情を企業に対して抱いている場合、その企業の感情的資産は高い。
感情的資産が高い場合の反応
感情的資産が高い場合の反応には以下のようなものがある。
- 商品に魅力があり購入したい
- 好きだから商品を購入したい
- 働いてみたい
- 働くことが誇りに思える
- 企業ロゴが入ったグッズが欲しい
- 応援したいと思う
- 諸事情で製品の販売が延期したとしても待つことができる
- 企業やサービスが無くなると、悲しみや寂しさを感じる
- サービスが停止すると困る
企業に対してだけでなくフリーランス、個人活動、パーソナルブランディングなど、人に対しても感情的資産は形成される。
感情的資産の例
Google社は検索エンジンの他、GmailやGoogleカレンダーなどを提供しており、各ツールがシームレスに連携している。利便性の観点でGoogleが提供しているツールから別のツールに変えることができない、変えたくないという人は多い。
Google社から提供されているツールが無くなってしまうと困る人も多い。このことから、Googleは「ツールを変えたくない」「ツールが無くなってしまうと困る」という感情的資産を持っている。
Apple社の製品も熱烈なファンが多く、新製品が出るたびに購入する人もいる。「Appleが新しい製品を出したら欲しい」という感情も感情的資産である。
国内で感情的資産を形成している例として、京都アニメーションがあげられる。
2019年7月18日に起きた放火事件が報道された当日に、海外では募金額が2億円以上集まり、2019年11月時点で国内外からの支援金が32億円を超えたという。
企業と被害にあったスタッフ達を応援するため、DVDやグッズなど関連商品は軒並み売り切れになり、2020年に公開を予定していた作品たちが公開延期と発表されてもなお、ファンからは「いつまでも待ちます」「延期の発表をしてくれてありがとう」といった応援の声が寄せられている。
「素晴らしい作品を作る人々と、かれらが所属する企業を応援したい」「京都アニメーションが無くなったら嫌だ」「作品を見れるのをいつまでも待つ」という感情的資産が存在していることが分かる。
感情的資産が形成される要因
ビジョンやカルチャーなど企業自体に関わる要素や、その企業で働く人、提供しているサービスなど様々な要因が合わさって感情的資産は形成される。
感情的資産形成要因の一部
- 会社のビジョン
- 商品・サービスの社会貢献度
- イノベーション性の高い商品・サービス
- リーダーのカリスマ性
- 会社のカルチャー
- サービス/商品の魅力
- ユーザーへの提供価値
- ブランド力
- 社員・顧客への誠実さ
感情的資産を形成するためには常に誠実な対応が必要
感情的資産は企業や製品・サービスに対して「好き」「信頼している」というポジティブな気持ちである。そのため、企業が消費者や従業員に対して不誠実な行動を取れば、感情的資産は減少してしまう。
例えば、2011年の7月にNetflix社は具体的な理由もなく突然、月額利用料を60%値上げした。ユーザーからは反感を買い、解約を目的としたネガティブキャンペーンがユーザー主導で行われ、同年9月に株価が半額に下落した。
感情的資産が下がるきっかけは、顧客を騙したり蔑ろに扱うだけでなく、社員やスタッフを騙したり、使いつぶすような経営が明るみに出た場合である。従業員による労働基準監督署への駆け込みや、顧客による企業へのネガティブなクチコミが発生した場合も、感情的資産が減少する。
感情的資産を蓄積するには時間がかかる一方で、不誠実な対応を行いによって、いとも簡単に減少してしまう。感情的資産を高めていくためには、社員やユーザーに対して常に誠実な対応をしていかなければならない。