システムが400ミリ秒以内に応答すれば、ユーザーは苦労することなく使い続けることができる。1982年にWalter J. DohertyとAhrvind J. Thadaniによって提唱され、IBMシステムズジャーナルにて発表された。提唱者の名前から、この400ミリ秒をドハティの閾値と呼ぶ。
1970年代の初めまで、人間が次の行動を行うまでに2秒(2000ミリ秒)かかると考えられていたため、システムの応答時間も2秒以内であれば優れたパフォーマンスであると判断されていた。1979年頃からシステム性能が向上したため、応答時間が2秒未満に縮まった。この頃からドハティ氏はユーザーの生産性が向上していることに気づいた。
この事から、ドハティ氏はシステムの応答時間とユーザーの生産性の関係性について調査をしたところ、システムの応答時間が400ミリ秒以内に収まると、ユーザーは高い生産性を発揮することが分かった。
400ミリ秒を超えるとユーザーの生産性が格段に落ちる
タダーニ氏が行なった調査から、システムの応答時間によってユーザーが次の行動に移るまでの時間(ユーザーの反応時間)が大幅に変化することが明らかになった。以下の図は、システムの応答時間が短いとユーザーの反応速度も短くなり、システムの応答時間が長いとユーザーの応答速度も長くなるというものである。
システムの応答時間が3秒の場合は、ユーザーが次の操作をするまでに17秒かかり、応答時間が0.3秒の場合では、ユーザーが次の操作をするまでに9.4秒かかった。
調査結果から、システムの応答時間が生産性に大きく影響すると分かった。
応答速度の遅さが売上の低下につながる
システム応答時間がドハティの閾値(400ミリ秒)よりも長かった場合、ユーザーの生産性が下がるため当然ビジネスの売上も下がるようになる。
ウェブサイトにも同じようなことが当てはまると考えられる。以下のグラフはアメリカのスーパーマーケットチェーンのWalmart社が、サイト全体の読み込み時間ごとにコンバージョン率を調べた結果である。
読み込み時間が「0-1秒」の場合だけ格段にコンバージョン率が高いことが分かる。読み込みを待っているとストレスが溜まり離脱している可能性もあるが、パフォーマンスが早くなることでユーザーの行動が促されているとも考えられるだろう。
どれだけ良い商品・サービスを用意していたとしても、サイトのスピードが遅いと売上の低下を招いてしまう。
見た目の良さや使い勝手のみでなく、システムのパフォーマンスを高めることは重要である。