恒常的注意力分散(Continuous Partial Attention)とは、複数の情報を見逃さないように、絶えず浅い注意を配り続ける状態を指す。
資料作成中でも、チャットの通知をずっと気にしており、通知が来るたびにアプリを開く。資料作成に集中できていないため、作業が進まないといった状況だ。
類似用語のマルチタスクでは「複数のタスクを早く片づけたい」という心理に対し、恒常的注意力分散では常に「見逃したくない」という心理になる。
語源・提唱者
Linda Stone が、注意が散る状態を「効率を求めた結果」と「常に新しい情報が気になる姿勢」として切り分けるために名づけた。

広まった理由は、メール・チャット・スマートフォン・SNSなどそれぞれにおいて、恒常的注意力分散がみられたことだった。それ以外にも多くの事象に見られる現象であることから、教育や認知心理学の研究にも題材として渡っていった。
見逃す不安が、注意を薄く広げる

この状態を続かせているのは、効率を求める気持ちではなく、つながりが切れることへの不安である。
情報の入口が増えるほど、ひとつの情報源に接触する時間が減る。その時間に何かが起きたかもしれないと考えると、確かめずにいられなくなる。確かめても新しい用事は無いことが多い。それでも不安は消えないので、次に確かめるまでの間隔が短くなっていく。
この見張りが続くと、常に臨戦体制の状態のまま戻らない。実際には急ぐ理由がなくても、何かが起きかけている感覚だけが残る。名づけたリンダ・ストーンの説明によると、これは人工的な危機感を作り出している状態である。
これが常態化すると、振り返る、決める、新しい考えを出すといった、ひとつのことに留まって集中する作業ができなくなる。
割り込みを前提にデザインする
恒常的注意力分散を知っていると、画面を作るときの前提が変わる。
知らないまま作ると、「利用者はその画面だけを見ている」と思い込んでしまう。実際には別のタブや通知を見張りながら来ているので、途中で離れて戻ったときに、どこまで進んだのか分からなくなる。
恒常的注意力分散を知っていれば、注意が途中で切れて戻ってくることを前提にデザインできる。入力途中の内容を残す、いまどの段階にいるかを画面に出す、割り込む通知の数を絞るといった施策が考えられる。
割り込みの仕事効率の実験
割り込みが仕事の効率に及ぼす影響は、Gloria Mark らの実験が調べている。実験では、作業を中断しても、中断しなかった場合より速く片づいた。ただし、そのぶんストレス・苛立ち・時間の切迫感・費やす労力がいずれも増えていた。速く終わったことをもって割り込みが無害だとは言えない。
恒常的注意力分散は、何回切り替えたら該当するかという線は無い。ストーン氏自身も、少量なら機能する振る舞いだと述べている。だから「恒常的注意力分散だから悪い」と決めつけず、どの場面でそれが起きているのかを見る使い方になる。
通知を増やす前に、割り込む理由を書く
この考え方がいちばん効くのは、通知やリアルタイム更新の仕様を決める設計・運用の段階である。
設計方法として、まず送る通知を並べて、それぞれに「いま割り込む理由」を1行書き添えた一覧を用意する。理由が書けない通知は、まとめて後で見せる側に回す。
Nielsen Norman Group の記事が引く2016年の調査では、利用者の1日の通知は平均56件だった。この量に1件足す判断だと考えると、割り込む理由はそれ相応のものに絞り込む必要がある。
短い間隔で続けざまに送ると、それだけで通知そのものを疎ましく思わせる。同記事は、同時に5件を超えるなら1通にまとめるよう勧めている。通知を止める操作がわからないと、利用者はアプリごと消してしまう。
会議はPCを開かない
全員がノートPCを開いたまま進む打ち合わせに対して、ストーン氏の処方は、機器を置いて相手に完全な注意を向けることである。冒頭の15分だけ画面を閉じると決めるだけでも、時間の使い方が大きく変わる。

関連用語
- マルチタスク
- アテンションエコノミー