サイモン効果(Simon effect)とは、音や光などの合図の中身から答えを選ぶとき、合図のある方向と逆側の選択肢を選ぼうとすると、反応が遅れる現象である。
例えば画面の左端に「続ける」、右端に「中止」のボタンがあり、出てきた警告の中身を読んで、どちらを押すかを決めるとする。警告は、中身に関係なく、画面の右にも左にも出る。このとき、右に出た警告を読んで左の「続ける」を押す場合は、左に出た警告を読んで同じボタンを押す場合より、押すのが遅れる。この遅れは、左右だけでなく上下に並べたときにも起こる。
何を押すか判断する前に、手が表示の側へ準備を始める

この現象を説明する代表的な考え方では、どのボタンを押すかを判断するより先に、表示が出た側のボタンを押す準備が始まるとみる。
警告の中身を読み、どのボタンを押すべきかを決めるには時間がかかる。表示と押すべきボタンが反対側にあると、判断がついた時点で、先に始めていた準備を取り消す必要があり、そのぶん遅れてしまう。
位置につられる速い処理と、中身から判断する遅い処理が並んで動くというこの説明を、二重経路モデルと呼ぶ。
よく似たものにストループ効果がある。ストループ効果では、青いインクで書かれた「赤」という文字のように、ひとつの表示が持つ意味と色がぶつかって答えが遅れる。サイモン効果でぶつかるのは、合図が出た位置と、選ぶ答えの位置である。
語源・提唱者
名前の由来は、アイオワ大学で心理学と産業工学の教授を務めたJ. Richard Simon である。
1967年にA. P. Rudell と組んだ実験では、参加者は「left」「right」という単語をヘッドホンの左右どちらかの耳で聞く。そして、聞こえた単語のとおりにボタンを押す。どちらの耳から聞こえたかは、答えに関係ない。それでも、右耳から「left」と聞こえたときは、左耳から聞こえたときより反応が遅れた。
同じ遅れは音に限らず起きる。1970年には、Craft とSimonが、左右に光るランプを使った実験で同じ遅れを確かめた。
遅れるだけでなく間違えることもある

冒頭の例でいえば、右に出た警告を読んで左の「続ける」を押すときは、左に出た警告を読んで押すときより、押すのが遅れる。この差は、多くの実験で20〜30ミリ秒ほどであり、実際に気になるほど遅いというわけでもない。
ただし、サイモン効果の影響は遅れるだけではない。右に出た警告を読んで左の「続ける」を押すつもりが、右の「中止」を押してしまう誤りも増える。色を見て左右のキーを押し分ける実験では、正しく押せた割合が、合図とキーが同じ側のときに98.5%、反対側のときに96.9%だった。
押すまでの時間の差は、素早く押したときほど大きく、ゆっくり押したときほど小さくなる。左右に並べた実験では、反応の遅い場面で、差が逆転することもある。
アイオワ大学は、この発見が緊急時の手順の改善やヒューマンエラーの削減につながったと紹介している。
表示と操作の左右を突き合わせる

使いどころは、画面のどこに何を表示し、どこにボタンを置くかを決める設計の工程である。
手元に残るのは、画面ごとに「注意を促す表示がどちら側に出るか」と「その表示を見て押すことが多いボタンがどちら側にあるか」を並べた一覧である。
たとえば、届いた申請を「承認」「却下」に振り分ける画面で、要確認の印が承認ボタンの側に出ているとする。印が付いた申請は却下することが多いなら、印を却下ボタンの側へ寄せる。反対側に並んでいる組み合わせが、直す候補として一覧に残る。
関連用語
- 刺激反応適合性
- フランカー課題
- ヒューマンエラー