TOP UX用語 デザイン・情報設計 アクセシビリティ

アクセシビリティ Accessibility

年齢や障害の有無に関係なく、すべての人が情報やサービス、製品、環境を平等に利用できる状態を指す概念

単に障害者のための配慮にとどまらず、すべての人々が直面する一時的・恒久的な制約(例:高齢による視力低下、騒音下での聴覚制限、片手使用など)を考慮し、利用可能性を高めることを目的とする。

この考え方は、ユニバーサルデザインインクルーシブデザインと密接に関連しており、社会全体の包摂性を高める手段として重要視され、特に高齢者や障害を持つ人々が日常生活で直面する障壁を取り除くことを目的としている。

提唱者と歴史的背景

Selwyn Goldsmith

Selwyn Goldsmith 引用:https://www.theguardian.com/society/2011/may/31/selwyn-goldsmith-obituary

アクセシビリティの概念を広めた主要な人物として、イギリスの建築家であるセルウィン・ゴールドスミス(Selwyn Goldsmith)が挙げられる。

彼は1963年に著書『Designing for the Disabled』を発表し、障害者のための建築設計に関する体系的なガイドラインを提示した。
彼の研究は、都市空間における「カーブカット(歩道の縁石を下げる設計)」の導入など、実用的なアクセシビリティ向上策を生み出した。

また、アメリカの建築家であり、ユニバーサルデザインの提唱者であるロナルド・メイス(Ronald Mace)によっても広められた。
彼は、すべての人が利用しやすい環境を設計する7原則のユニバーサルデザイン(Seven Principles of Universal Design)を提唱し、その中でアクセシビリティの重要性を強調した。彼の功績により、公共施設や製品の設計において、誰もが利用可能であることが重視されるようになった。

デザインにおける活用方法と具体例

1. ウェブ・デジタルデザイン

  • スクリーンリーダー対応画像に代替テキスト(alt属性)を設定し、視覚障害者が内容を理解できるようにする。

  • キーボード操作のサポートマウスを使用できないユーザーのために、すべての機能をキーボードで操作可能にする。

2. 建築・空間デザイン

  • 段差の解消スロープやエレベーターの設置により、車椅子利用者や高齢者の移動を容易にする。

  • 視覚的サインの工夫色覚多様性を考慮した配色や、点字・触知図の導入により、視覚障害者への情報提供を強化する。

3. 製品・インターフェースデザイン

  • 音声案内機能視覚に頼らず操作できるよう、音声によるガイダンスを提供する。

  • 触覚フィードバック操作時に振動やクリック感を加えることで、視覚や聴覚に頼らず操作状況を把握できるようにする。

一般(社会や生活)におけるアクセシビリティ

  • 製品や建物サービスのアクセスのしやすさ、利用しやすさ
  • 高齢者や障害者などハンディキャップを持つ人に支障なく利用できる度合い

Webにおけるアクセシビリティ

  • 情報やサービスへのアクセスのしやすさ
  • 高齢者や障害者なども含めたあらゆる人が、どのような環境(うるさい場所や、暗い場所、逆に明るい場所など)においても柔軟にWebサイトを利用できるように構築すること

Googleでの”accesibility”を画像検索

“accessibility” のGoogle画像検索結果

“accessibility” のGoogle画像検索結果

アクセシビリティの改善

アクセシビリティの改善アプローチは、大きく次の3点である。

アクセシビリティの改善アプローチ

アクセシビリティの改善アプローチ

具体的な改善手法

アクセシビリティを改善する際の具体的な手法には次のようなものがある。

ガイドラインおよびヒューリスティック評価として用いられるものを一部紹介する。

WCAG 2.0 (Web Content Accessibility Guidelines 2.0)

W3Cが定めたアクセシビリティに関するISOの国際規格。海外では法律で義務化する国も増加中。Webサイト構築においてチェックすべきポイントや優先度などを解説している。
例えば、視覚障害を持つ人には音声によるガイドを付けるようにすること、画像やアニメーションにはそれと同等の内容のテキストをalt属性で表現すること等、細かく指定されている。

JIS X 8341-3

国際的基準である WCAG 2.0を原案としてJIS規格が定められている。
高齢者や障害のある人を含む全ての利用者が、使用している端末、ウェブブラウザ、支援技術などに関係なく、ウェブコンテンツを利用することができるようにするための基準が定められてる。JIS X 8341という番号は「8341=やさしい 」という語呂合わせから。

以下、一部抜粋

  • ページタイトルは、Webページの内容が分かるように記述する
  • リンクテキストは、リンク先が分かる文言にする
  • 音声や動画を自動的に再生しない
  • キーボードでも操作できるようにする
  • 制限のある時間内での操作を要求しない
  • サイトマップを提供する
  • サイト内検索機能を提供する
  • エラーメッセージは、エラーの内容と指示を分かりやすく説明する
  • 共通した機能の見た目やラベルには、一貫性を持たせる
  • ナビゲーションには、一貫性を持たせる
  • Webサイト内での現在位置が分かるようにする

Jakob Nielsenのユーザビリティ10原則

  • システム状態の認知度(Visibility of system status)
  • システムと実世界の調和(Match between system and the real world)
  • ユーザーの主導権と自由度(User control and freedom)
  • 一貫性と標準化(Consistency and standards)
  • エラーの予防(Error prevention)
  • 再生より再認(Recognition rather than recall)
  • 柔軟性と効率性(Flexibility and efficiency of use)
  • 美的で最小限のデザイン(Aesthetic and minimalist design)
  • ユーザーによるエラーの認識・診断・回復のサポート(Help users recognize, diagnose, and recover from errors)
  • ヘルプとドキュメンテーション(Help and documentation)

アクセシビリティとUXの関係

UXデザイン業界でよく利用されている評価方法の一つ、UXハニカムの中の1要素として「accessible(アクセスしやすさ)」がある。

UXハニカム

UXハニカムのイメージ(引用:要リンク)

さらに、このUXハニカムを元に作成された以下のピラミッド図では、「アクセスのしやすさ」がUXの基本となっていることがわかる。

坂本貴史氏がUXハニカムをもとに作成した図

坂本貴史氏がUXハニカムをもとに作成した図(引用:要リンク)

アクセシビリティは、UXの根幹を支える重要なポイントである。もしアクセシビリティが不十分であれば、使いやすさ・満足度といった価値を損なうことに繋がってしまう。

まとめ

「アクセシビリティ」とは、様々な人が様々なツールやデバイスを、様々な利用環境の中で使えるかどうか、ということである。「アクセシビリティ」を満たした先に「使いやすさ」や「満足度」などのさらなる価値が生まれる。

Webにおけるアクセシビリティには多くのガイドラインや評価方法が存在しており、それらをうまく参照・利用し、ユーザーの満足度を向上することが重要だ。

関連情報

用語

参考文献

「UX用語」のカテゴリー