人は意味のありそうな動き、ポーズ、人の顔の特徴を捉えた図形やパターンを目にすると、無意識に生命や意思があると認識してしまう傾向がある。
例えば、写真のような形状をした大根は「走って逃げようとしている」または「元気に走っている」ように感じるため、【逃げる大根】という名称がつけられている。
大根なのに走っているように見え、人が持つような意思や感情まで感じ取ってしまうのは、擬人観における認識機能が働いているためである。
似ている言葉で「擬人化」というものがある。擬人観は無意識に人以外のものを人のように感じることなのに対し、擬人化とは人以外のものに対して人としての性質・特徴を与える比喩表現である。
宗教においての擬人観
現代においての擬人観と意味合いが異なるが、古来より一部の宗教では擬人観が用いられてきた。
大自然の絶対的な力に対する偶像崇拝、宗教の教えや教義を説明するための手段という意味合いが強い。古くは旧石器時代後期に制作されたとされる象牙彫刻の「ライオンマン」や、エジプト神話では天空をつかさどる神として、頭がハヤブサで体は人間という「ホルス」などが存在する。
擬人観をデザインに利用する
コカ・コーラのボトルデザインは、その形状から「女性のボディラインがモデルになっているのでは」と噂された時期があった。実際には類似品対策としてカカオ豆の形状を模してデザインしていたが、その滑らかなボトルのラインに女性性を見出してしまったのは、擬人観によるものである。
人に見たてられる形状や、人に似ているものを「擬人化形状」と呼び、見る者の注意を引いて親しみや好ましさを抱き感情面に作用する。
鋭さがあり角ばっているデザインは男性を、華奢でくびれや丸みを帯びたデザインは女性を、丸っこく角の少ないデザインは赤ん坊を想起させる。
商品やサービスへの注意を引きたい場合には、擬人観をうまく取り入れたデザインを検討してみるとよいだろう。