カスタマーサクセス(Customer Success)とは、契約後も問い合わせを待たずに働きかけ、顧客が望む成果を得られるように支える取り組みである。
たとえば、請求書を自動で作れる業務ソフトを契約した会社が、毎日ログインしているものの、請求書は手作業で作り続けているとする。売り手の担当者は、問い合わせがなくても状況を確かめ、請求書の作成を自動にするための設定を一緒に進める。
こうした支援は、会社として顧客にどう関わるかという事業上の方針であり、担当部署が担う仕事でもある。
ソフトを使った先の成果を支える
この会社が達成したいのは、ソフトにログインすることではなく、請求書の作成を自動にすることである。担当者は、自動化の設定で止まっていることを確認し、最初の請求書を自動で作れるところまで支援する。その後も、日々の仕事で自動作成を使えているかを確かめる。
カスタマーサポートは、顧客からの問い合わせに応じて問題を解く仕事である。一方、カスタマーサクセスでは、売り手から先回りして働きかける。

担当者は、どの顧客に働きかけるかを決めるために「健康度(ヘルススコア)」を使う。これは、製品の利用状況や過去のサポートの記録などをまとめ、顧客が契約を更新しそうかを評価する指標である。赤・黄・緑や0〜100の点数で示すことが多い。ただし、請求書ソフトの例では、ログインが続いているかに加え、請求書を自動で作れているかを確かめる必要がある。
語源・提唱者
カスタマーサクセスという職業は、1996年、顧客情報を管理するソフトウェアを提供するVantiveで生まれた。同社は担当部署を設け、顧客が成果を得られるように支える担当職として、カスタマーサクセスマネージャーを置いた。
継続して料金を受け取る事業では、最初に売るだけでなく、顧客に契約を続けてもらうことが重要になる。2005年ごろ、ソフトウェアを提供するSalesforceは毎月8%の顧客を失っていた。同社の最高経営責任者Marc Benioffは、成果を得られない顧客は容易に離れると説明し、既存顧客がサービスを使い続けられるよう担当組織を作った。

支援が必要な顧客を見つける
冒頭の請求書ソフトの例では、会社は毎日ログインしていても自動作成を使わず、問い合わせもしていない。健康度を使うと、担当者は今すぐ支援が必要な顧客と、順調な顧客を見分けやすくなる。問い合わせのない会社にも状況を確かめに行く判断につながる。

先に挙げた毎月8%の解約が続くと、各月に残る顧客は前月の92%となる。これが12か月続くと、ある時点の顧客が1年後に残る割合は「0.92の12乗≒0.37」、約37%となる。
Inc.の記事によると、Salesforceの年間解約率は1桁台後半になった。年間解約率は、1年間に契約をやめた顧客の割合を示す。ただし、毎月8%という数値と年間1桁台後半という数値では、集計期間が異なる。この数値だけで、取り組みの効果を直接比較することはできない。
利用の始めに目標をそろえる
GitLabは、顧客が利用を始める時期に、立ち上げを支援する「オンボーディング」を行っている。この時期を、顧客が最初から価値と成果を得るための機会と位置づけている。担当者は営業担当などから引き継ぎを受け、顧客側には定期的に連絡を取る窓口を少なくとも2人持つ。
GitLabでは、利用開始から成果を得るまでの目安を次のように設けている。
| 取り組み・到達点 | 利用開始からの目安 |
|---|---|
| 最初の打ち合わせ | 14日以内 |
| 最初の定例会 | 30日以内 |
| 最初の価値に届く | 30日 |
| 立ち上げ支援の完了 | 45日 |
最初の打ち合わせでは、顧客が事業で達成したい成果と、近く迎える節目を確認し、双方の認識をそろえる。目標と進み具合を記録・共有する文書が「サクセスプラン」である。顧客と社内のチームが同じ計画を確認できるよう、担当者が更新し続ける。

自分の仕事に重ねるなら、利用説明を終えたかだけでなく、顧客が最初に何を達成するかを計画に記す。その到達点を顧客と共有し、進み具合を確認する打ち合わせにつなげるという使い方である。
関連用語
- カスタマーサポート
- 解約率