我を忘れ、時間を忘れ、集中している状態。フローに入ることで、たとえ難題であっても、乗り越えられる課題として集中して取り組むことができる。時には空腹や疲れさえも忘れて没頭することができる。フローに入った状態を、フロー体験と言う。
またスポーツなどでよく言われる「ゾーンに入る」とはフローに入った状態を指す。元プロ野球選手の川上哲治氏の「ボールが止まって見えた」発言などが例である。
心理学者Mihaly Csikszentmihalyiによって1975年に提唱された。
フロー体験に伴う7つの要因
フロー体験には7つの要因を伴う。これら全て満たす必要はないが、いくつかの要因が合間ってフロー体験を得ることができる
- 目的意識が明確で、常に自分が何をしたいのか分かっていること
- すぐにフィードバックが得られること (成功したか失敗したかわかる等)
- 取り組む課題に対して、何をすべきかアプローチ方法も明確であること
- 取り組む事柄が、努力すれば解決できるくらいの難易度であること
- 時間の感覚が消失すること
- 自分自身のことを忘れてしまうこと
- 自分はもっと大きな流れの一部であると感じること
人間の精神状態を8つに分けたメンタルステート図
チクセントミハイはメンタルステート図を用いてフロー体験を説明した。
縦軸はタスクの難易度を表す「挑戦のレベル」で横軸は自分の能力を表す「スキルのレベル」として、黄色の箇所に入ることでフロー体験を得ることができる。取り組むタスクが自身のもつスキルレベルよりはるかに簡単な場合は「退屈」や「無感動」状態を引き起こし、スキルレベルが低いにも関わらずタスクの難易度が高い場合には「不安」、「心配」状態を引き起こす。よって、中心点レベルを把握していると、フロー体験を得られる可能性が高まる。
物事に取り組む際に、初めは挑戦レベルが高くスキルレベルが低い「不安」な状態でも、取り組むうちにスキルレベルが上がり、「覚醒」〜「フロー」へと状態が変わることもある。しかし、フローに入った状態でも時間経過によってスキルレベルが上がり、フローから「コントロール」〜「リラックス」へと変化する。フロー体験を長期間得るためには、取り組む課題の挑戦レベルを上げ続けていくことが求められる。
フロー体験で人生の幸福感が得られる
フローは、人間がどういう状態で幸福を感じるかという研究の中で見つかった。
1956年にアメリカで行われた調査では30%の人が人生が非常に幸せだと答えている。その数字は1998年の調査でも全く変化していない。一方、個人の収入はインフレを考慮した尺度で見ると約40年で約3倍に向上した。チクセントミハイはこの調査結果を見て、「ある基準を超えてしまえば 物質的な充足は人の幸福とは関係せず、 基本的な物資(物的な財産)が不足すると不幸に結びつく。一方で、物的な財産が増えても、幸福は増大しない」と考えた。よって、人間はどうなると幸福を感じるのかの研究をはじめ、忘我の如きフロー体験を得ることで、人生において幸福を得られると唱えた。