狩野モデルは、東京理科大学名誉教授の狩野紀昭教授によって1980年代に開発されました。
このモデルは、競合と差別化する属性(魅力品質)と、顧客満足に不可欠な属性(当たり前品質)を区別する優先順位付けの方法です。
商品開発の現場において、顧客満足度の優先順位の高いUXから改善に取り組むことは非常に重要です。
このモデルは、優先順位の高いUXを視覚化し、ユーザー中心の意思決定を行うための効果的な方法です。
5つの品質要素
狩野は、y軸に顧客の満足度、x軸に物理的充足状況をグラフとして、顧客の求める品質を5つの要素に分けました。
当たり前品質
「当たり前品質」とは、言葉そのままのあって当たり前の要素です。
それが充足されれば当たり前と受け止められるが、不充足であれば顧客の不満を引き起こす品質要素です。
テレビであれば、音量やチャンネルが変更できるといった基本的な機能のことです。
魅力的品質
「魅力的品質」は、これが充足されなくても顧客が不満になりませんが、充足されれば、顧客に満足を与え、喜びをもたらす品質要素。
テレビであれば、3D視聴ができる、ディスプレイが透過するなどが考えられます。
一元的品質
充足に応じて顧客満足度が上下する要素。
一元的品質でも、競合より極めて高い品質であれば、魅力品質に匹敵するぐらいの満足が与えられます。
テレビであれば、超薄型や兆候解像度なディスプレイが考えられます。
無関心品質
充足でも不充足でも、顧客の満足度に影響を与えない要素。
逆品質
充足されているのに不満を引き起こしたり、不充足であるのに満足を与える要素。
これは、生産者側は充足する努力をしているが、結果的に不満を与えてしまうことなどが該当します。
時代によっても変化する
以前は「魅力的品質」であったとしても、時間が経過することで「あたり前品質」としかみなされず、満足を高めることにはつながらなくなる要素もあります。
UXデザイナーが狩野モデルで意識すべきこと
商品開発をしていると、魅力的品質ばかり目が向きがちになることがあります。
もちろん魅力的な品質は重要ですが、「当たり前品質」にも目を向けることが必要です。
UXデザイナーはそれぞれの要素がユーザーにとって、「狩野モデルの5つの要素」のどれに該当するか見極める力が重要になります。
魅力的品質は、当たり前品質の欠落を補うことではありません。
当たり前品質が欠落していれば、どれだけ魅力的品質があっても不満を残す体験となる可能性があります。
また、魅力的品質と考えていた機能がユーザーには当たり前と受け取られることもあります。
私たちはユーザーを理解し、総合的に品質を高められるように計画・活動しなければなりません。
参考文献
魅力的品質と当り前品質Attractive Quality and Must-Be Quality