メンタルアカウンティング
Mental Accounting

利用目的や取得方法によって金銭の価値や使用基準が変化する心理現象

人は同じ金額を使う場合でも、使用目的や収入源によって「使うかどうかの意思決定」が変化する。日本語では「心の会計(家計簿)」とも呼ばれる。

お金を全て同じ基準で比べるのではなく、使用する度に基準を設けて価値を考える。例えば、同じ1万円でも給与として口座に入っている1万円と、部屋の掃除中にたまたま見つけた1万円では、たまたま見つけた1万円の方が気軽に使う傾向がある。

アメリカの経済学者であるRichard H. Thalerリチャード・H・セイラーが提唱した。

Richard Thaler

引用元:wikipedia

アカウントとは口座という意味である。心の中で用途別に複数の口座を用意して、用途ごとに使用するかどうかを口座単位で判断してお金を使用していく。このように口座ごとに予算内に収まるかどうかを判断していくため、メンタルアカウンティング(心の会計)という名前が付けられた。

メンタルアカウンティングが働く例

2002年にノーベル経済学賞を受賞したことで有名なDaniel Kahnemanダニエル・カーネマンと、彼の共同研究者として有名なAmos Tverskyエイモス・トベルスキーが行ったシナリオ例題は、メンタルアカウンティングが働く典型例である。

映画のチケット代金

チケット10ドルの劇を観ようとしたとする。

劇場でチケットを買おうとして、10ドル札を失くしていたことに気づきました。財布から10ドル出して当日券を買いますか?

上記の質問を聞かれた時、全体のうち「はい」と答えた人が88%、「いいえ」と答えた人が12%であった。

事前に10ドル出して前売り券を買ったとします。劇場に入って、前売り券を失くしていたことに気づきました。もう一度10ドル出して当日券を買いますか?

上記の質問を聞かれた時、全体のうち「はい」と答えた人が46%、「いいえ」と答えた人が54%であった。

どちらも結果的には20ドルかかっているにも関わらず、「チケットを買う」という目的に対して異なる反応を示している。

チケットを再度買う場合は、追加で10ドルを支払うと感じてしまうため、購入することを抵抗してしまう。一方、10ドル失くしたことに気づいた場合は、目的に対してまだ1ドルも払っていないため、購入することに抵抗を感じない。

チケットの再購入比率

状況によってチケットを再購入する率が変化する

メンタルアカウンティングが働く3つの代表的な状況

メンタルアカウンティングが働く状況として、代表的な例を3つ紹介する。

使用目的の違い

使用目的によってお金の価値は変化する。

例えば、日常においてコンビニで昼食を購入する時に100円のおにぎり200円のおにぎりを比較した場合、安い方のおにぎりを選ぶが、旅行先の昼食で1,000円のラーメン1,100円の特上ラーメンを比較した時は、100円程度の差なら値段の高い特上ラーメンを選ぶ可能性がある。

同じ100円でも「生活費」「娯楽費」という使用目的の違いによって、100円の価値や払うかどうかの基準が異なる。生活費における100円の価値に比べて娯楽費の100円は安いと感じやすい。

メンタルアカウンティング例1

同じ100円差でも、使うシーンによって選び方が異なる

取得方法の違い

手に入れた方法によっても、人はお金に対して異なる価値をつける。

例えば、給料として手に入れた10万円と、ギャンブルで手に入れた10万円であれば、ギャンブルで手に入れた10万円は浪費する傾向がある。

給料として手に入れたお金の方が高い価値であると思うのは、「自分が苦労して手に入れたものは貴重なものである」というイケア効果が働いているためだ。

メンタルアカウンティング例2

お金の手に入れ方で使い方が変わる

比較対象につられる

比べる対象の金額が高いと、安く感じる傾向がある。

同じ10万円のカーナビだとしても、単体で購入する時よりも、400万円の自動車のオプションとして10万円のカーナビを設置する時の方が、支払いに対して抵抗感を抱きにくい。

単体で見た時は「10万円を払うかどうか」が判断基準となるが、「自動車のオプション」として検討した時は、400万円の自動車に比べたら10万円のカーナビは安いと感じる。

一番最初に接した情報や数値が、意思決定や判断に影響を及ぼしてしまうアンカリングが働くために、同じ10万円のカーナビだとしても、価値の感じ方が変化する。

メンタルアカウンティング例3

比較対象につられて高い安いの判断が変わる

参考文献

参考サイト

この記事を書いた人:藤原 脩平

現在、システムエンジニアとして自社サービスの企画/開発を行なっています。
ユーザーファーストなサービス開発を心がけたいという思いから、UX DAYS TOKYOのスタッフとして活動を始めました。

最近はリサーチスキルを伸ばすために統計学を勉強している。