オムニチャネル
Omni Channel

オンライン・オフライン問わず、顧客とのあらゆる接点で最適な購買体験を提供すること

オムニチャネルとは、小売業における販売戦略の1つで、リアル、オンラインなど様々な購買動線を設ける「クロスチャネル」の考え方を一歩進め、「顧客が購買可能なすべてのチャネル(販路、顧客接点など)と流通経路をつなげること」である。

オムニチャネルの始まり

オムニチャネルという戦略を最初に提唱したのは、米有名百貨店のMacy’sメイシーズであるといわれる。2013年に在庫管理の課題に直面したことから、リアルとオンラインを連動させる必要に迫られていた。

ニューヨークのMacy's店舗

ニューヨークのMacy’s店舗(画像引用元: Wikipedia)

リアルとオンラインでの在庫共有・可視化を皮切りに、オンライン上での顧客の動きを観察して在庫を有するリアル店舗に誘導するなど、リアルだけ、オンラインだけではない新たな購買体験を作り上げることに成功した。
もともと、Macy’sは2008年からRFIDアールエフアイディ(*1)を使った施策を研究していた。2013年に在庫管理の課題に取り組んだことでオンラインとオフラインの融合について一気に話が進み、2015年にはRFIDを使った施策が実店舗に導入された。

2020年現在ではどれも当たり前と思われることだが、逆にMacy’sの取り組みがどれだけ先進的だったかという証明にもなるだろう。

*1:RFIDとは、名称、値段、製造年月日などの電子情報を入力した「RFタグ」を商品に貼り付け、専用のリーダライタでその情報を読み書きするシステムのこと。

オムニチャネルの独自性

オムニチャネルと似た用語として、マルチチャネル、クロスチャネル、O2Oがある。

  • マルチチャネル
    リテーラーが店舗、EC、カタログなど、複数チャネルを持っている状態を指す。チャネル間での連動は行なっていない。
  • クロスチャネル
    マルチチャネルから一歩進み、チャネル間で在庫管理を連動させた状態。Macy’sで行われた在庫連動の取り組みがこれに当たる。CRMの導入により、チャネル間での在庫管理共通化が実現し、ECで注文した商品が実は売り切れだったという状態がなくなった。
マルチチャネル、クロスチャネルとオムニチャネル

マルチチャネル、クロスチャネルとオムニチャネル

  • O2O
    名前の通り、オンライン(Webサイト、アプリ)からオフライン(実店舗)に顧客を誘導する考え方を指す。Webサイトに実店舗用のクーポンを表示したり、実店舗に近づくとスマホアプリ経由でお知らせが飛んだり、といったものが該当する。店舗での顧客体験が鍵となるリテーラー、飲食店の施策に事例が多い。(スターバックスコーヒーのモバイルオーダー等)
O2Oとオムニチャネルとの違い

O2Oとオムニチャネルとの違い

オムニチャネルの考え方はこれらをもっと進めており、オンラインとオフラインといった購買動線を分けるのではなく、より絡み合った形で購買体験に落とし込んでいる。

日本におけるオムニチャネル

日本においてオムニチャネルという言葉を有名にしたのは、恐らくセブン&アイグループであろう。セブン&アイグループ各社のオンラインストアを一堂に集めた「オムニ7」を構築し、グループ共通IDである「7iD(セブンアイディ)」でログインできるようにした。

オンラインストアの共通化にとどまらず、オンラインストア上で注文した商品の受け取りをセブンイレブン店舗に指定できるなど、当時のMacy’sのようなリアルとオンラインの融合を目指した。2014年時点で明確にオムニチャネル戦略を掲げており、日本のオムニチャネル施策の先駆けと言える。

セブン&アイHLDGSのオムニチャネルへの取り組み

セブン&アイHLDGSのオムニチャネルへの取り組み(画像引用元:7&アイHLDGS)

そのほか、ユニクロではオンラインストアで購入した商品を店舗で受け取れたり、無印良品では自社アプリ上で在庫検索やニュース配信、ポイント付与まで行えたりと、2020年現在では、オムニチャネルは多くの企業で実践されていると言える。

オムニチャネルの未来

中国においてはオムニチャネルの先を行く「OMO(Online merges with Offline)」という考え方がすでに一般的になっているという。オンライン、オフラインというチャネルで分けることをせず、ユーザー体験の中で必要と思われるタッチポイントにオンラインもオフラインもない、という考え方である。

O2Oでは、オンラインからオフラインへという流れが明確であり、オムニチャネルではそのような流れはないものの、オンライン・オフラインというチャネルの区別はされている。EC体験、店舗体験は別物として設計されているのが一般的だが、OMOの場合はそうではない。概要図で表すと以下のようになる。

O2O、オムニチャネル、OMOの比較概要図

O2O、オムニチャネル、OMOの比較概要図

特に有名なのが、中国の平安保険の例だ。もともと、一般的な保険企業だった平安保険は、2013年頃からデジタル化を進める方向に戦略を転換。平安グッドドクターアプリというチャットで医師と相談できるアプリをリリースした。

日本でも医師に相談できるWebサービスは存在するが(例:アスクドクターズ)、平安グッドドクターアプリは、相談の結果、通院が必要な場合にアプリ上から来院予約ができる。それだけでなく、ユーザーが毎日アプリを開く動機付けとして、ポイントがもらえるウォーキングプログラムがある。ウォーキングで貯めたポイントは、アプリ上の各種サービスで利用でき、ユーザーが毎日アプリを開く行動設計をしている。

また中国のカーメディアであるBitAuto(易車)では、以下のような図を用いて、自社の戦略を紹介しているという。オンラインメディアを主力としていながら、車に関わるライフステージのすべてに自社サービスを配置し、より顧客中心のカーライフを提供するのが使命だという。

bitautoのOMOカスタマーマップ

画像引用元:一兆スマイル新聞

オムニチャネルにおいては、行動データを取りやすいオンラインからいかにオフラインにつなげるか、というのが論点だったが、時代が進み、もはやそのような課題設定はなくなっていくのかもしれない。

関連用語

  • タッチポイント
  • リードジェネレーション
  • リードナーチャリング
  • サービスドミナントロジック

参考文献

参考サイト

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野本健志

Fintech領域専門のコンサルタント。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、楽天、リクルートテクノロジーズを経て株式会社インフキュリオンに入社。コンサルタントとしてサービス企画に関わる中で、ユーザー体験に精通しなければ本当に使われるものは生み出せないと感じ、2019年8月よりUX DAYS TOKYOのスタッフに参加。