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ポライトネス理論 Politeness Theory

会話相手との関係性を適切または良好に保つため、配慮して発言するという理論。

ポライトネス理論の「ポライトネス」は本来の「礼儀正しさ」「丁寧」という意味ではなく、自分の言動によって相手からの印象を適切または良好に保つための配慮を表す。

1987年にPenelope Brown , Ph.D.ペネロペ・ブラウン博士と、Stephen C. Levinson, Ph.Dスティーヴン・レビンソン博士が提唱した理論である。

ブラウン氏とレビンソン氏

ブラウン氏(左)とレビンソン氏(右)

相手から期待している自分の印象=フェイス

ポライトネス理論では、 “相手から自分がどう思われたいか” という欲求をフェイスと定義しており、2種類が存在する。

  1. ポジティブ・フェイス
    他者から“賞賛されたい” 、“好かれたい” という欲求
  2. ネガティブ・フェイス
    他者から “距離を離したい”、 “関与されたくない” という欲求

この場合の「ポジティブ/ネガティブ」は、「肯定的/否定的」という意味でなく、相手との距離を近づけたい(ポジティブ)、距離を離したい(ネガティブ)という意味である。

フェイスを脅かす行動=FTA

フェイスを侵害する行為を、FTA (Face Threatening Act:フェイスを脅かす行為)と呼ぶ。FTAの度合いは、主に下記2点を数値化して求める。

  • 話し手と聞き手の社会的距離 (血縁関係や初対面などの関係性)
  • 話し手と聞き手の相対的権力 (上司と部下、消費者と供給者などの関係性)

フェイスを満たす行動=ポライトネス・ストラテジー

人間は、FTAによってフェイスが脅かされないように回避行動を取る。この行動をポライトネス・ストラテジーと定義している。
ポライトネス・ストラテジーは下記5種類に分類できる。FTAの度合いに応じて、どのポライトネス・ストラテジーを取るか決定する。

FTAの度合いに応じてポライトネス・ストラテジーを決定する

FTAの度合いに応じてポライトネス・ストラテジーを決定する

上司にプランを提案する時の例

上司にプランを提案する際、自分が良いと考えていたプランとは別のプランを上司が受け入れた。その時、「上司からの評価を良くしたい」というポジティブ・フェイスを満たすために、意見の不一致を避けるポジティブ・ポライトネスを選択する。

この例をポライトネス理論に当てはめると、フェイス/FTA/ポライトネス・ストラテジーの関係性は下記の通りとなる。

フェイス、FTA、ポライトネス・ストラテジーの関係性

フェイス、FTA、ポライトネス・ストラテジーの関係性

調査はポライトネスが働かないよう工夫すべき

UXの調査では、ポライトネスが生じないように取り組むべきである。アンケートやインタビューでポライトネスが生じてしまうと、回答者(ユーザー)が本当に考えていること、感じていることを引き出せなくなるからだ。

回答者の言葉のニュアンスから、ポジティブ・ポライトネスを単純に良い行動と解釈するのは間違いである。それは、ポジティブ・ポライトネスは、相手から良く見られたい(ポジティブ・フェイスを満たしたい)という欲求によって生じているため、本来の意図とは異なる回答を選択している場合があるからだ。

例えば、回答者が、“インタビュアーが(自分が回答するインタビュー内容の)サービス開発に携わっている” と認識した場合、 “サービスを否定したらインタビュアーを傷つけてしまうのでは?” とか、”嫌な人だな。”と思われたくないなどのポライトネスが生じてしまう恐れがある。

そのため「自分は開発者ではない」と伝えたり、開発者だとしても「自分は開発に深く関与していない」と事前に伝えるべきである。

人は周囲の人間に対して良い顔をする、外面が良くなりがちなので、ポライトネスが働かないように、インタビュー前に雑談などのアイスブレイクを実施し、社会的距離を近づける必要がある。

また、「率直に自分が思っている回答ならば、どのような回答でも正しい」と回答者に伝え、相対的権力を回答者に与える必要がある。

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現在、システムエンジニアとして自社サービスの企画/開発を行なっています。 ユーザーファーストなサービス開発を心がけたいという思いから、UX DAYS TOKYOのスタッフとして活動を始めました。 最近はリサーチスキルを伸ばすために統計学を勉強している。

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