”ある環境・状況下において機能するものが拡大・縮小しても機能する”と考えることは誤りである。
スケーリングの誤解の代表例として、「自重よりはるかに重い物体を持ち上げるアリやカブトムシが、人のサイズになったとしても同じことができる」というものがある。
ハキリアリは、自重の50倍の重さの物体を運ぶことができるが、人(仮に体重が70kgとする)のサイズになった場合、計算上、3.5トンもの物体を運べることとなる。しかし、現実はサイズの増加に伴い、重力の作用が指数関数的に増えるため、70kgになったアリは自分の身体を動かすことさえ困難になる。
2種類の誤解
スケーリングの誤解には、負荷と相互作用の二種類がある。
負荷に関する誤解
負荷に関する誤解とは、ある対象の寸法を拡大/縮小した際、対象にかかる圧力や重力なども同様の倍率で増減すると思い込むことである。対象にかかる圧力や重力は指数関数的に増えるため、サイズが2倍になったからといって、圧力や重力も2倍になるとは限らない。
トライデントという潜水艦発射弾道ミサイルを例に挙げる。トライデントI(制式名称:UGM-96)のスペックを元に、2倍程のサイズとなるトライデントII(制式名称:UGM-133A)が設計された。しかし、ミサイルが受ける水圧等も誤って2倍程度で計算したため、実験は失敗した。
相互作用に関する誤解
相互作用に関する誤解とは、対象の寸法が変わったとしても、対象への関わり方が変わらないと思い込むことである。
例えば、20階建てのマンションでは、3階建てのマンションでは発生しなかった問題が起きる。
高層階からの転落事故、地震や火災による避難など、様々な問題が発生することを考慮しなければならない。
Webデザインにおけるスケーリングの誤解
スケーリングの誤解は、Webデザインにもたびたび発生している。例えば、PCサイトをそのままスマートフォンサイトに流用しても、ユーザビリティは保持されていると誤解される。
最適化されていないウェブサイトをスマートフォンで表示してしまうと、文字サイズが小さすぎて読めなかったり、使いづらく視認性の悪い状態になってしまう。
ウェブサイトはあらゆるユーザーの閲覧状況を考慮し、最適化を行うべきである。