情報デザインでは「意味のある情報」をS(シグナル)、「意味のない情報」や「無駄な装飾」をN(ノイズ)と呼び、その比率のことをSN比(S/N比)という。
SN比が大きいほど、雑音が少なく情報伝達が良く、小さいほど情報伝達が悪い。
過度な装飾により情報の本質が見づらくなるとSN比は低くなり、逆に情報の本質が分かりやすく、情報が伝わりやすいとSN比は高くなる。
良いデザインとは「意味のある情報」(シグナル)を最大化し、「意味のない情報」や「無駄な装飾」(ノイズ)を最小化したもので、デザインを設計する際は、ノイズを極力削除し、ユーザーに負荷を与えないデザインを設計することが大切である。
SN比は元々情報工学の世界で、信号(Signal)と雑音(Noise)の比率を表していた。
SN比を下げてしまう5つの要因
情報デザインにおけるノイズの原因として考えられるのは以下の5つである。
①過度な装飾
ボタンに意味のない装飾やシャドウ、光沢をいれてしまうとユーザーに意図が伝わりにくくなってしまう。
②わかりにくいアイコン
ユーザーが見慣れていないアイコンを使用してしまうと直感的で早い思考モードである「システム1」で判断することができず、クリックされない恐れがある。
③不適切なグラフ
グラフには様々な種類があり、データによって適しているグラフが異なる。
利用シーンに合わせた選択を行うことが大切である。
④曖昧な文章
曖昧で意味がはっきりしていない文章はユーザーが理解することができず、ストレスが溜まってしまうため、避けるようにする。
⑤余白のない構成
余白がないとどこまでを同じグループか認識することができず、理解しにくくなってしまう。
同じグループのものは、デザインの4原則の「近接」を使って余白を開けることで可読性が上がる。
SN比を高める6つの方法
SN比を高めるには以下の対応を行うと効果的である。
①色やコントラストで強調する
有意な情報はそうではない情報よりも強調して目立たせる。
②過度な装飾を省く
色や強調の使い過ぎを見直し、最低限の装飾を施す。
③簡潔な文章にする
文章は構成を吟味し、無駄な部分は削除する。
④表現の慣例や基準に従う
その情報を表現するのに一般的な慣例や基準があればそれに従う。
⑤適切なアイコンを使用する
アイコンは分かりやすく、適切なものを使用する。
⑥不要な要素を排除する
削除しても問題ない要素は積極的に削除する。
シグナルとノイズのバランスが大事
情報の伝わりやすさだけを考えると、ノイズが全く存在しないことが理想的である。しかし、ノイズがない単純なデザインは、拡張性や機能性に乏しく、アイデンティティが薄いため、記憶に残らなくなる恐れがある。
情報設計・デザインにおいて、魅力的であるかどうか、記憶に残るかどうかという要素も重要であるため、設計する際はどのぐらいのSN比が理想的であるか考慮する必要がある。ノイズはバランスを形成するファクターという側面を持っていることも意識するべきである。