コンテキストを認識する重要性
置かれている環境や状況(コンテキスト)によって、同じ行動をする場合でも、心情などは全く変わってくる。また同じ言葉でも、発信する人や場所で意味が異なったり、スポーツの試合でホームグラウンドのチームが有利になったりする。それほど身の回りにある物事に対して、コンテキストが重大な影響を及ぼしているのである。
例えば「電車遅延をスマートフォンで通知する」という機能も、該当する電車に乗ろうとしているユーザーにとっては便利なものになるが、そうでないユーザーにとっては役に立たないものになる。
このように、サービスを提供する際にはユーザーが置かれているコンテキストを認識することが重要である。
コンテキストアウェアネスを利用する
ユーザーが持つデバイスから場所、気温、動きなどのデータを収集すると、パターンを見つけ出してそれに応じたコンテキストを組み立てていくことが可能である。
例えば、スマートフォンのGPS機能からユーザーの位置情報を取得し、さらにその位置の気象情報と組み合わせることで「ユーザーが外出中で、その場所に雨が降りそうである」というコンテキストを組み立てる。そのコンテキストを元に「そろそろ雨が降りそうですよ」というような情報の提供をユーザーに行うことができる。
コンテキストアウェアネスを利用したサービス
コンテキストアウェアネスを利用したサービスの一つに、Googleのスマートフォンアプリが挙げられる。
ユーザーのいる位置や時間を元に「終電まであとXX分」と通知したり、ユーザーの周辺の気象情報や交通渋滞情報を通知したりする。
スマートフォン向けのナビゲーションアプリ
コンテキストアウェアネスのアプリは他にもあり、スマートフォン向けのナビゲーションアプリにもコンテキストアウェアネスが利用されている。ナビゲーションアプリはスマートフォンのGPSを使用して位置情報を取得し、地図に重ね合わせて表示する。地下街やビル内に入った時などGPSの電波を捕捉できなくなった場合は、スマートフォンの加速度センサやジャイロセンサ、磁気センサなどを使ってどの場所を移動しているのかを追跡するように処理を変更する。
コンサルタント企業のGartner社が2018年に発表した技術のなかで、自分専用の予測が可能な「パーソナルアナリティクス」がある。ユーザーそれぞれのコンテキストに基づいた関連データの分析で、個々のユーザー向けに洞察、予測、推奨事項を提供することを目的にしている。(数年以内に職場への導入が始まる6つの技術――Gartnerが解説より)
コンテキストアウェアネス活用の注意点
「データ(位置情報、センサーデータなど)を取得すれば、コンテキストアウェアネスを活用できる」というわけではない。データを収集すること自体は決して悪いことではないが、データがユーザーの意思や何をしているかということまで表しているわけではなく、正確にコンテキストを認識できるとは限らないからである。
例えば、スマートフォンのGPSが駅の場所を示しているからといって、ユーザーは必ずしも電車に乗ろうとしているわけではない。誰かを迎えにきているだけかもしれないし、たまたま駅前を通っただけかもしれない。したがって、取得したデータのみに頼るのではなく、ユーザーが使っている時のコンテキストをリサーチする必要がある。
UX DAYS TOKYO 2017のスピーカーであり、デジタルプロダクトデザイナーのケニー・ボウルズ(Cennydd Bowles)氏がDesigning Contextにおいて「データ分析によるコンテキストへのアプローチは危険である」ことを説明している。(UX TIMESにも翻訳記事を掲載している)