”子供の身長が高くなったので、今まで着ていた服の丈が短くなってしまった。”のように、原因と結果を表す2つの関係を「因果関係」という。
2つのことが同時期に起こっていても、必ずしも因果関係にあるとは限らない。事象だけで安易に判断せず、本当に原因と結果になっているかを検証する必要がある。
因果関係を検証する3つのポイント
因果関係があるかを確認するためには、「偶然でない」「関与している原因がない」「逆の因果関係が存在していない」という3つのポイントがある。
3つが全て満たされている場合に限り、因果関係が成立している。
1.偶然でないか?
2つの事象が偶然に発生したものかどうかを確認する。下の図は1820年から2000年における海賊の数と気温の変化をグラフ化したものだ。
青い線が海賊の数、オレンジの線が気温を表している。グラフの推移だけみると、「海賊が減ったタイミング」と「平均気温が上昇したタイミング」が同じ時期に発生しているように見える。
しかし、海賊の減少と気温の上昇は偶然であり、「海賊が減ったから地球温暖化が進んだ」と結論づけることは難しい。まずは、偶然であるかの検証する。
2.関与している要因を考える
原因と結果の両方に関係している要因がないかを考える。
下の図は小学生の学力テスト、国語A、国語B、算数A、算数Bの正答率と体力テストの点数をそれぞれグラフ化したものである。
グラフからは、体力テストの点数が高いと学力テストの結果も高いように見えるが、それだけで「体力があると学力テストの結果が高い」という因果関係を導き出すことはできない。
教育熱心な親が子供にスポーツをさせると、子供の学力は向上するかどうか、本当に子供の体力が学力に影響するか検証する必要がある。
3.逆の因果関係が存在していないか
原因と結果が逆になっていないかを疑う必要がある。
例えば、警察官が多い地域では犯罪の件数も多い傾向がある。このことから「警察官が多いから犯罪の件数が多いと推測される」と結論づけてしまうのは早計だ。むしろ「犯罪の件数が多いから警察官が多いと推測される」と考える方が自然である。
間違った因果関係の解釈にならないために
原因として考えられる事柄が「なかった場合」にどうなっていたかという、反事実を検証すると因果関係を証明できる。
「なかった場合」を検証する
原因として考えられる事象以外を可能な限り同じ条件にして、検証結果の正当性を担保する必要がある。
例えば、「雨が降ったこと」と「デリバリーの売上高が上がった」ことが同時に起きた時、両者の因果関係を検証するには、雨が降らなかった日の売上高と比較すれば良い。
雨が降らなかった日よりも、雨が降った日の方がデリバリーの売上高が高ければ、「雨が降ったこと」が原因で「デリバリーの売上高が上がった」ことが証明できる。
関連用語
参考文献
中室牧子・津川友介(2017)『「原因と結果」の経済学―データから真実を見抜く思考法』ダイヤモンド社.