証拠や合理性よりも、願望や希望が判断に影響を与え、現実を見誤る危険性がある。
提唱者と背景

左:ダニエル・カーネマン、右:エイモス・トベルスキー(出展:http://grawemeyer.org)
具体的な「提唱者」はいないものの、認知心理学の文脈ではアモス・トベルスキーやダニエル・カーネマンによるヒューリスティック研究の一環として位置付けられる概念である。
物語構造に踏み込み、クリストファー・ブッカーは「fantasy cycle(幻想サイクル)」として描写している。
デザイン上での利用方法と具体事例
1. プロダクト・アイデア評価
問題点:「この機能、絶対使われるはず」と願望的に信じ込み、ユーザー検証を軽視すると、実際にはニーズが乏しい機能を開発してしまう。
対策:ユーザー調査やA/Bテストで現実に反応を確認し、継続的に仮説を検証する。
2. ユーザーインタビュー結果の解釈
問題点:支持意見だけを取り上げ、「みんなが求めている」と思い込むと、反対意見や潜在ニーズを見落とす。
対策:肯定・否定の両方の声を尊重し、定量データと合わせて判断する。
3. KPIや売上予測の過信
問題点:過去成功事例だけを根拠に「次もこれで勝てる」と期待してしまう。
対策:競合分析・市場調査・異なるシナリオでの予測を行い、多角的に判断する。
シーンと具体的事例
シーン:新機能リリース直前の社内報告会
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よくある場面:「ユーザーは絶対に求めている」「みんな反応する」と開発チームが希望的観測を前面に押し出す。
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改善例:「ユーザーテストで50人中70%が有用と回答」「事前登録率は前回比+12%」と実データを併記して報告し、根拠に基づく期待感を伝える。
デザイン上のチェックポイント
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データ vs 希望:仮説を立証する前に、必ず小さな検証ステップを設ける。
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反証を歓迎する:チームで「何が起こらないとまずいか」を議論し、懐疑的な視点も取り入れる。
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幻想サイクルから脱却:楽観→狂信→挫折の流れを意識し、現実に立ち返る設計プロセスを定期的に挟む。
希望的観測
自分が望む結論を、現実よりも信じたくなる
→ 証拠や合理性より「願い」が判断を左右
→ 幻想→失望→反動 的なサイクルに陥る可能性も
希望的観測は、ポジティブな想像が現実とのギャップとなる思考のワナである。
そのため、プロダクトやコンテンツを設計する場面では、現実のデータに基づいた検証と懐疑の視点を組み込むことで、より確かな意思決定を実現できるである。