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四個概念の誤謬 Fallacy of Four Terms

三段論法において「共通の媒介項が3つではなく4つ以上存在してしまう」ことで、見かけは正しく見えても論理的に無効となる誤謬

三段論法において「共通の媒介項が3つではなく4つ以上存在してしまう」ことで、見かけは正しく見えても論理的に無効となる誤謬である。
媒介項が一致していないため、前提から結論への論理的接合が成立しない不具合である。

起源と提唱者

アリストテレス

アリストテレス(引用:https://amzn.to/3HvxzZ9)

この誤謬はアリストテレスによって最初に定義された形式的誤謬であり、後世の論理学(例:イリウス・M・コピやA・R・レイシーらの著書)においても取り上げられている。特定の“提唱者”よりも、形式論理学の基礎として位置づけられている。

デザインにおける応用と具体事例

1. 要件定義・仕様策定

問題:利害関係者からの要望を単語ベースで整理した結果、「用語の多義性」で媒介項が異なり、仕様が食い違う。
対策:主要概念は明確に定義し、「Aとは何を指すか」を用語集で共通化してから仕様書に落とす。

2. ユーザーストーリー整理

問題:「ユーザー」「顧客」「利用者」などを同一カテゴリとして扱うことで、誰に向けての機能なのかわからなくなる。
対策:主語(役割)を統一しストーリーを整理。「購入者」「閲覧者」「管理者」など明確なカテゴリごとに整理する。

3. ドキュメント・コミュニケーション

問題:「承認」という言葉が「稟議承認」と「UI操作の承認」で異なる意味で使われ混在し、実装漏れや相違が生じる。
対策:用語を明示的に区別し、必要に応じて接尾辞(稟議承認/UI承認)を付与し、ドキュメントで一貫性を確保する。

シーンと具体的事例

場面:開発チームとビジネス側が「登録」機能について議論する際。

  • 誤謬の例:「登録=メールアドレスを登録すること」と「登録=会員登録処理」が混同され、API設計とUI仕様に齟齬が発生する。

  • 改善例:「メール登録」「会員登録」「サービス利用登録」といった用語をドキュメントに明記し、それぞれの内容を仕様書に定義。この用語明示がプロジェクトの認識齟齬を防ぐ。

関連用語

まとめ

  • 原則:三段論法では媒介項が3つに限定されるのが前提である。
  • 誤謬:媒介項に重複や曖昧な意味違いがあると、論理が無効になる。
  • 実務への応用:デザインや開発においても、用語の明確化とドキュメント整備を行うことで、チーム間の認識齟齬を防ぎ、品質の高い成果物の実現に寄与する。

四個概念の誤謬は、書かれている内容や図の見た目に錯覚させられやすい「見た目論理」に潜む落とし穴であり、用語の一貫性確保は全体の品質向上に直結する、重要な設計知見である。

UX DAYS TOKYO オーガナイザ/デジタルマーケティングコンサルタント 著書 ・ノンデザイナーでもわかる UX+理論で作るWebデザインGoogle Search Consoleの教科書 毎年春に行われているUX DAYS TOKYOは私自身の学びの場にもなっています。学んだ知識を実践し勉強会やブログなどでフィードバックしています。 UXは奥が深いので、みなさん一緒に勉強していきましょう! スローガンは「早く学ぶより深く学ぶ」「本質のUXを突き止める」です。

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