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理解レベル効果 Comprehension Level Effect

ユーザーが情報をどれだけ理解しているか(理解度)によって、その情報に対する反応や行動が変化する心理的・認知的な現象

情報の難易度や伝え方が、理解できるレベルにあるかどうかで、ユーザーの行動決定・信頼形成・記憶定着に大きな差が生まれる。
同じ内容でも反応が変わることがこの効果の本質である。

ユーザーがコンテンツや操作をどの程度理解できるかによって、操作ミス、離脱率、エンゲージメント、コンバージョン率などが大きく変化する。
特に複雑な情報や専門性の高い内容を含む製品・サービスにおいては、理解度の違いがUX(ユーザー体験)に与える影響は極めて大きい。

デザイン上に関わる利用方法と事例

人は、意味や背景を関連づけると覚えやすい、関連づけは無理やりこじつけても覚えやすい。
この「理解レベル効果」を活用したデザインは、ユーザーの理解度に応じて、情報の提示方法や構成を最適化を行うと良い。

デザイン活用法 説明例
レベル別チュートリアル設計 初心者・中級者・上級者向けに異なるガイドを用意する
用語の階層構造化 専門用語に注釈をつける、図解や動画で補足する
理解度チェック導入 自己診断テストやミニクイズでユーザーが理解を確認できる機能を設ける
情報のスモールステップ化 複雑なプロセスを小さなステップに分解し、順を追って進めることで理解を促進する

【利用方法】

SaaSプロダクトのオンボーディング
NotionやSlackのようなツールでは、ユーザーの理解度に応じて操作チュートリアルをスキップまたは段階的に表示することで、使い始めやすさを高めている。

保険比較サイト
専門用語(例:掛け金・免責金額)に注釈をつけ、図や動画で解説を補完することで理解の壁を下げている。

教育系アプリ(Duolingoなど)
難易度に応じた問題提示と、理解度に基づく復習設計が、習熟度に応じた学習体験を実現している。

プロダクト/コンテンツ設計における応用

導入ハードルの高い業務系ツールのUI設計
ユーザーの業務経験年数ごとにダッシュボード表示をカスタマイズすることで、導入初期の混乱を避けられる。

行政・医療系サービスの一般向け情報提供
難解な制度・手続き情報に対し、やさしい日本語+ビジュアル+段階説明を組み合わせることで、広範な市民が正確に理解できるようになる。

Eコマースにおける商品比較体験
初心者向けに「最初に確認すべき3つのポイント」をガイド表示、中級者以上には詳細スペックを中心に見せる設計が可能である。

【事例】

事例1:複雑なUIはユーザーの理解度を下げる(例:予約システム)

航空会社や医療機関の予約システムにおいて、カレンダーとフォームが混在し、手順が不明瞭なUIの場合、以下のような問題が多発する傾向がある。

  • エラー率の上昇
  • 予約完了までの時間の増加
  • 途中離脱(予約を完了せずにページを閉じる)

参考出典:
Nielsen Norman Group「Complex Forms and Low Completion Rates

事例2:情報の整理とレイアウトの改善によって理解度が向上し、コンバージョン率が上昇(例:ランディングページ)

eコマースサイトのランディングページにおいて、以下のようなUI改善を実施した:

  • テキストに階層構造(見出し・箇条書き)を導入
  • CTA(Call to Action)の視認性と明確さを向上
  • 難解な専門用語をやさしい言葉に言い換え

結果:

  • 情報の「理解しやすさ」が向上
  • CTAのクリック率が20%以上増加

参考出典:
CXL InstituteのA/Bテスト事例において、UIの可読性と理解度がCVR(コンバージョン率)に直接的な影響を与えることが示されている。

事例3:ヘルプUI・ツールチップの有無による理解度の差(例:SaaSプロダクト)

BtoB向けSaaSプロダクトにおいて、「条件付きフィルター設定」などの複雑な機能に対して以下の2グループを比較した:

  • チュートリアルやガイドを導入したグループ
  • 補助なしのグループ

結果:

  • 初回操作の成功率が30%向上
  • 長期的な継続使用率が向上

参考出典:
WalkMe、Appcuesなど、オンボーディングUXツール提供企業による事例報告より。

事例4:モバイルアプリにおける理解度の錯覚(例:アイコンの誤解)

「ハンバーガーメニュー(≡)」や「ゴミ箱アイコン」などの視覚要素が、国や世代によって異なる解釈をされる場合がある。

  • 若年層は「ゴミ箱=削除」と理解する傾向がある
  • 高齢層では「一時保管」と誤解される場合がある

結果:

  • 誤操作や不安の増加
  • 「戻る方法がわからない」といった理由で離脱が発生

デザイン上に関わる利用方法と事例

プロダクトやサービスを設計する際、ユーザーの理解レベルに応じた設計を行うことにより、ユーザーの迷いや誤解を減らし、自己効力感を高めることができる。

活用方法 説明
コンテンツの階層設計 各レベルに応じたコンテンツを分けて提示(例:概要→使い方→背景→応用例)
ナビゲーション誘導 初心者には表層・機能理解のページを推奨し、上級者には構造・応用理解を提示
学習システムの設計 理解度を診断し、次に進むステップや補助教材をカスタマイズする
プロダクトツアー 使い始めの導入では「この機能は何のためにあるのか」を重視した説明を組み込む

理解レベルの4段階とは

「理解レベル効果」はその理解度が行動に与えるインパクトを示す概念で、ユーザーの状態を把握する構造的モデル「理解レベルの4段階」がある
人間が物事や情報をどの深さで理解しているかを分類したモデルであり、教育学や認知心理学をはじめ、UX設計、マニュアル作成、学習支援などの分野で活用されている。

以下の4段階で構成されることが多い。このレベルを把握することで、ユーザーに対して適切な情報量や導線設計、コンテンツ構造を提供することが可能となる。

理解レベル 概要
① 表層理解 用語や表現の意味をなんとなく認識できる段階
② 機能理解 その情報が「何に使えるか」わかる段階
③ 構造理解 背景・理由・仕組みを理解できる段階
④ 応用理解 他の状況で活用・応用できる段階

まとめ: 理解レベル効果の構造

UI要素 理解度が低いと… 結果
ナビゲーションの構造 次に何をすればよいか不明 離脱、フラストレーション
用語・ラベル 意味を誤解する可能性がある 誤操作、エラー
チュートリアル・説明文 曖昧または読みにくい 初回体験の失敗
フォーム設計 項目の意味が理解されない 入力ミス、コンバージョン低下

補足:この効果を活かすデザインのヒント

  • ピクトグラムや色の使用
    意味を視覚的に補完し、認知の手助けを行う。
  • ステップバイステップ型のUI構造
    操作の流れを段階的に示し、認知負荷を軽減する。
  • ユーザーテストやフィードバックの導入
    実際のユーザーの理解度を測定し、継続的に改善する。

チェックポイント例

  • ☑ 想定ユーザーの知識レベルに合っているか?
  • ☑ 理解度に応じて説明量・タイミングを調整しているか?
  • ☑ 情報過多・専門用語過多になっていないか?
  • ☑ 理解できたか確認できる仕組みがあるか?

UX DAYS TOKYO オーガナイザ/デジタルマーケティングコンサルタント 著書 ・ノンデザイナーでもわかる UX+理論で作るWebデザインGoogle Search Consoleの教科書 毎年春に行われているUX DAYS TOKYOは私自身の学びの場にもなっています。学んだ知識を実践し勉強会やブログなどでフィードバックしています。 UXは奥が深いので、みなさん一緒に勉強していきましょう! スローガンは「早く学ぶより深く学ぶ」「本質のUXを突き止める」です。

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