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知識の呪縛 Curse of Knowledge

一度ある知識を持つと、その知識を持たない人の立場を想像することが難しくなる認知バイアス

専門知識を持つ者が、他者も同じ背景知識を共有していると無意識に仮定し、説明や表現を過度に省略・高度化してしまう傾向を指す。結果として、情報の伝達や教育において認識のズレが生じやすくなる。

提唱者

「知識の呪縛」という表現は、1990年にエリザベス・ニュートン(Elizabeth Newton)によるスタンフォード大学の実験に由来する。

ニュートンは「タッパー実験(tapper experiment)」を通じ、知識を持つ人(リズムを指で机に叩く人)が、知らない人(聞く人)がどの曲か当てる確率を大幅に過大評価することを示した。この実験が知識の呪縛の代表例とされる。

デザイン上の利用方法と事例

知識の呪縛は、特に情報設計やUI/UXデザインで問題となる。デザイナーや開発者が熟知している仕組みを、ユーザーが当然理解していると誤認し、結果としてわかりにくい操作体系や不親切な説明につながる。

  • 事例1(プロダクト)
    ソフトウェア開発において、開発者が専門用語や省略した操作説明をUIに盛り込むと、初心者ユーザーは理解できない。たとえば「リポジトリをクローン」などの専門的ラベルは、非技術ユーザーには意味不明である。この場合、「コピーして保存する」といった平易な表現に置き換えることが有効である。

  • 事例2(コンテンツデザイン)
    教材やマニュアル作成の際、制作者が「基本的なことだから説明不要」と判断すると、初心者にとって必要な部分が抜け落ちる。例えば、料理アプリで「オーブンを180℃に予熱」と書くだけでは、初心者は「予熱ってどうやるの?」とつまずく。ここに「電源を入れて温度を設定する」などの補足を入れることで理解度が高まる。

プロダクトやコンテンツデザインでの活用シーン

  • UI/UX設計:ユーザーテストを実施し、専門家ではなく初心者ユーザーが直感的に操作できるかを確認する。
  • 教育サービス:知識レベルに応じた複数のレイヤーで説明(入門/中級/上級)を用意する。
  • マーケティング:顧客にとって当然でない専門用語を避け、誰にでも理解できる言葉に置き換える。

UX DAYS TOKYO オーガナイザ/デジタルマーケティングコンサルタント 著書 ・ノンデザイナーでもわかる UX+理論で作るWebデザインGoogle Search Consoleの教科書 毎年春に行われているUX DAYS TOKYOは私自身の学びの場にもなっています。学んだ知識を実践し勉強会やブログなどでフィードバックしています。 UXは奥が深いので、みなさん一緒に勉強していきましょう! スローガンは「早く学ぶより深く学ぶ」「本質のUXを突き止める」です。

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