もともとは動物実験において、電気ショックから逃れられない犬が、逃げられる環境に移された後も行動を起こさず無抵抗になる現象として報告された。
人間の場合も同様で、失敗の繰り返しや、努力が評価されない環境で育った場合、「変わらない」と信じ込み、新しい挑戦や改善を避けてしまう。
提唱者

引用:(pursuit-of-happiness.org)マーティン・セリグマン
この概念は、マーティン・セリグマン(Martin E. P. Seligman) によって1960年代に提唱された。
セリグマンはポジティブ心理学の提唱者としても知られている。彼は「帰属スタイル」という概念を提唱し、人が否定的な出来事をどのように解釈するかが精神的健康に大きく関係していることを明らかにした
出典: Seligman, M. E. P. (1991). Learned Optimism: How to Change Your Mind and Your Life. New York: Knopf.
https://www.authentichappiness.sas.upenn.edu/learn/learnedoptimism
デザイン上に関わる利用方法と事例
デザイン領域においては、「学習性無力感を避ける」ことが中心となる。ユーザーに繰り返し失敗や挫折を経験させると、使い続ける意欲を失わせるためである。
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UXデザイン
ユーザーがエラーを繰り返すと「自分には使えない」と思い込み、離脱する可能性が高まる。したがって、デザインは「失敗しても次につながる」「成功体験を小さく積み重ねられる」ように設計すべきである。 -
教育アプリ・学習サービス
難しい問題ばかり出すと生徒が「自分にはできない」と思い込みやすい。徐々に難易度を上げる「スキャフォールディング設計」を行うことで、学習性無力感を防ぎ、挑戦意欲を維持できる。 -
ヘルスケアや習慣化アプリ
ダイエットや運動の成果がすぐに出ないと「やっても無駄だ」と感じやすい。小さな進歩を可視化したり、称賛する仕組みを入れることでユーザーの継続を支援できる。
プロダクト・コンテンツデザインで「この場面に使える」シーンと具体例
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シーン1:新規ユーザーのオンボーディング
初めての操作でエラーが多発すると離脱につながるため、導入時は「小さな成功体験」を提供することが重要である。
例:チュートリアルで必ず正解できる簡単な操作を組み込む。 -
シーン2:習慣形成のサポート
健康アプリで「毎日30分運動」と提示すると挫折しやすい。
例:「まずは1分歩く」から始めさせることで無力感を防ぎ、行動継続を促す。 -
シーン3:教育サービス
常に間違いを指摘する設計では無力感を助長する。
例:AIチューターが「ここは惜しい!」と前向きにフィードバックし、小さな成功を強調する。