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量子コンピュータ

「0」と「1」が同時に重なり合う状態(量子重ね合わせ)を持つ量子ビットの原理を用いて情報処理を行う計算機

量子力学*の原理を用いて情報処理を行う計算機。
従来のコンピュータが「0」か「1」で表現されるビットを最小単位とするのに対し、量子コンピュータは「0」と「1」が同時に重なり合う状態(量子重ね合わせ)を持つ量子ビット(qubit)を用いる。この性質により、並列的に膨大な計算を行うことが可能である。

*量子力学について

普通の世界では、たとえばボールを投げたら「どこに飛んでいくか」確認できる。
しかし、すごく小さい原子や電子のような世界では、普通のルールが通じない。
そこで出てくるのが 量子力学(りょうしりきがく)

量子力学では、以下のような考えが必要になる。

  • 電子はボールみたいに点ではなく、「雲(くも)」みたいに広がっている。
  • どこにいるかは、はっきりわからず「ここにいるかもしれない確率」でしか言えない。
  • 見たり測ったりすると、一瞬で場所や状態が決まる。

つまり、量子力学は「小さいものの不思議なルールを扱う学問」である。
この理解しがたい世界を表現するために”シュレーディンガーの猫”という話がある。

物理学者 エルヴィン・シュレーディンガーが考えた話で、猫が入っている箱に、1時間以内に放射線を出すかもしれない原子と、それに反応して毒ガスが出る装置も入れ、猫が死んているかどうかについて、以下のような状態であることが、量子力学の「観測するまでは決まらない」という考え方を、人間にとってわかりやすい例で示そうとした。

  • 箱を開けて観測するまでは、猫は 生きているし死んでもいる というありえないような状態。
  • 箱を開けて見た瞬間に「生きている」か「死んでいる」かが決まる。

提唱者について

リチャード・P・ファインマン

リチャード・P・ファインマン

量子コンピュータの概念を初めて提唱したのは物理学者 リチャード・P・ファインマン(Richard P. Feynman)である。1981年の講演において、従来のコンピュータではシミュレーションが難しい量子現象を計算するために、量子の性質を利用したコンピュータの必要性を示した。

  • 提唱者:リチャード・P・ファインマン

デザイン上に関わる利用方法

量子コンピュータは、従来の計算機を超える探索・最適化能力を持つため、デザインやUXにおいても新しいアプローチを可能にする。

  • パーソナライゼーション設計
    膨大なユーザーデータを同時に解析し、より正確でリアルタイムなカスタマイズを実現できる。

  • 複雑なシナリオのシミュレーション
    都市デザインや交通システムのUI/UX設計で、多数の利用者行動を同時に計算し、最適なフローを設計することが可能である。

  • 創造的デザインの探索
    デザインのパターン生成やレイアウト最適化において、人間では見落とすような新しい構造を導き出せる。

デザインやUXに新しいアプローチを可能にする理由

量子力学の性質を利用して「たくさんの選択肢を同時に考えられる」からである。

1. 普通のコンピュータとの違い

  • 従来のコンピュータは、0か1のビットで情報を扱う。
     →「ひとつずつ」順番に候補を試していくのが基本である。

  • 量子コンピュータは、0と1を同時に表現できる「量子ビット(qubit)」を使う。
     →「複数の選択肢」を一度に考えられるので、探索や最適化が飛躍的に速くなる。

2. どうしてデザインやUXに役立つのか

デザインやUXでは「正解がひとつではなく、組み合わせや条件の最適解を探す」ことが多い。

例えば:

  • UIデザインの最適化
     色、配置、フォント、ボタンサイズなど、無数の組み合わせがある。
     量子コンピュータなら、その膨大なデザインパターンの中から「ユーザーがもっとも迷わない配置」や「視線の流れが自然なデザイン」を一気に探索できる。

  • パーソナライズされたUX
     ユーザーの行動ログや好みを組み合わせると、数億通りのパターンになる。
     従来コンピュータだと時間がかかるが、量子コンピュータなら「その人にとって最もスムーズな体験」をリアルタイムで提案できる可能性がある。

  • 複雑な経路や選択の最適化
     例:ショッピングアプリで「欲しいものを最短・最安で揃えるルート」や、
     モビリティサービスで「全員が快適に移動できる経路」を即座に計算できる。

3. わかりやすいたとえ

従来のコンピュータは「迷路を一つひとつ試しながらゴールを探す探検家」である。
量子コンピュータは「迷路の全ルートを同時に歩ける探検家」である。
だから、ゴールにたどりつくまでの時間が圧倒的に短い。

この場面に使えるかな?という事例

  • サービスデザイン:交通アプリで「数百万人の移動シナリオ」を瞬時に計算し、混雑を避けるルートを提案する。
  • ECサイトUX:ユーザー行動の予測を高速に計算し、最適な商品レコメンドを行う。
  • ヘルスケアプロダクト:患者ごとの膨大なゲノム情報を高速に解析し、個別化されたUX設計(服薬指導アプリや診断支援)を可能にする。

まとめ

量子コンピュータは「同時に多くの選択肢を試せる」ため、探索や最適化のスピードが圧倒的に速い。
そのため、デザインやUXの分野でも「無数のデザイン案やユーザー体験の組み合わせ」から、最適な解をすばやく導ける新しいアプローチが可能になる。

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UX DAYS TOKYO オーガナイザ/デジタルマーケティングコンサルタント 著書 ・ノンデザイナーでもわかる UX+理論で作るWebデザインGoogle Search Consoleの教科書 毎年春に行われているUX DAYS TOKYOは私自身の学びの場にもなっています。学んだ知識を実践し勉強会やブログなどでフィードバックしています。 UXは奥が深いので、みなさん一緒に勉強していきましょう! スローガンは「早く学ぶより深く学ぶ」「本質のUXを突き止める」です。

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