VLM(Vision-Language Models)とは、視覚情報(画像・映像)と自然言語(テキスト)を統合的に理解し処理するAIモデルの総称である。
画像認識(Computer Vision) の技術(例:画像の特徴抽出、物体検出、シーン理解)大規模言語モデル(LLM) の技術(例:自然言語の理解と生成、文脈推論)を組み合わせて構築されたAIモデルである。両者を結合することにより、画像と言語の相互関係を理解することが可能となる。
例えば、画像に映っているものをテキストで説明したり、文章から対応する画像を生成したりすることができる。代表例として CLIP(OpenAI) や Flamingo(DeepMind) などがある。DeepMind は 2014年に Google に買収され、その後「Google DeepMind」という名称で研究を続けている。
「ブイ・エル・エム」と読むのが一般的である。日本語表記では「ビジョン・ランゲージ・モデル」と表現することもある。また、日本語では「大規模視覚言語モデル」と呼ばれる。
出来ること
- 画像を説明する文章を生成する、画像キャプション生成
- 「この画像に何が写っているか教えて」といった画像に基づく質問応答
- テキスト入力から画像の取得、または画像入力からテキストによる説明の取得、といった異なるデータ形式を組み合わせたマルチモーダル検索
提唱者
サム・アルトマン 氏 OpenAI最高経営責任者
DeepMind 共同創業者 デミス・ハサビス氏(Demis Hassabis)
「VLM」という概念を単独で提唱した特定の研究者はいない。ただし、OpenAI(CLIP, 2021年) や DeepMind(Flamingo, 2022年) などの研究が、この分野を大きく推進した。
VLMの活用事例
- 自動運転での交通標識や道路指示
- ECサイトでの商品レコメンド
- 商品などの情報の自動生成
デザイン上に関わる利用方法と具体的事例
アクセシビリティ向上
- VLMは視覚障害者向けに、画像やUIを自然言語で説明するシステムに活用できる。
- 例:写真をアップロードすると「3人が会議室で議論している様子です」と説明する。
検索体験の改善
- ユーザーが「赤い花の咲いた庭の写真」と入力すると、膨大な画像データベースから該当画像を即座に検索できる。
デザインリサーチ支援
- デザイナーが「ミニマルで北欧風の家具デザイン」と入力すると、関連する画像を提示し、インスピレーションを得られる。
プロトタイピングの効率化
- スケッチやUIのワイヤーフレームを読み取り、「この画面はログインページです」と自動でテキスト化する。
- デザインドキュメント生成を半自動化できる。
プロダクト・コンテンツデザインの観点で使える場面と事例
場面① 新規アプリのUIテスト
→ 手描きの画面設計図を写真に撮ると、VLMが「ホーム画面」「プロフィール画面」などを分類・説明してくれる。
場面② Eコマースにおける商品検索
→ ユーザーが「青いチェック柄のシャツを探している」と入力すると、商品画像を言語的に理解してマッチングできる。
場面③ 教育や学習支援
→ 教材の画像(例:地図やグラフ)をアップロードすると、VLMが「これは第二次世界大戦の戦況を示した地図です」と解説できる。
6種類の生成AIモデル
生成AI全体としては 言語・画像・音声・動画・3D・マルチモーダル など多様な分野で活用されている。
1.言語モデル
- LLM(Large Language Model)
2017年にGoogleの研究チームが発表した「Attention is All You Need」 論文
事例:カスタマーサポートやレストラン予約など。
2.画像生成系
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GAN(Generative Adversarial Networks)
生成器(Generator)と識別器(Discriminator)の二者が競い合う仕組みを利用し、リアルな画像や映像を生成する。
事例:人物のフェイク写真生成、ファッションデザインのプロトタイプ作成。 -
拡散モデル(Diffusion Models, 例: Stable Diffusion, DALL·E)
ノイズから徐々に画像を復元する仕組みを持つ。GANより安定的で高解像度の生成が可能である。
事例:広告ビジュアルの作成、プロダクトのコンセプトアート生成。
3. 動画生成系
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Video Diffusion / VideoGAN
拡散モデルやGANを動画に拡張したものである。連続するフレームを自然につなぎ、高品質な映像を生成できる。
事例:UIアニメーションのプロトタイプ作成、広告動画の自動生成。
4.音声・音楽生成系
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音声合成モデル(TTS: Text-to-Speech, 例: Tacotron, VALL-E)
テキストを人間らしい音声に変換する。声質や感情表現の調整も可能である。
事例:ナレーション付きUXプロトタイプ、キャラクターボイスの自動生成。 -
音楽生成モデル(例: Jukebox, MusicLM)
特定のジャンルや楽器構成に基づき新しい楽曲を生成する。
事例:アプリ内のBGM生成、ユーザー体験に合わせた音のパーソナライズ。
5. マルチモーダル生成系
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CLIP + Diffusion(OpenAIのCLIPなど)
画像と言語を組み合わせ、より意味的に整合性のある生成を実現する。
事例:テキストからUIデザインや説明図を生成、教育教材の自動作成。 -
VLM(Vision-Language Models, 例: Flamingo, Kosmos-1)
テキストと画像を統合的に理解・生成する。
事例:ユーザーが描いたスケッチを自動的にデザイン案に変換。
6.3D生成系
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NeRF(Neural Radiance Fields)
複数枚の写真から3Dモデルを生成する。3D空間でのレンダリングに強い。
事例:製品デザインのモックアップ、ゲーム用3Dオブジェクト生成。 -
3D拡散モデル(例: DreamFusion)
テキストから直接3Dモデルを生成できる。
事例:家具や家電のコンセプトデザイン、建築ビジュアライゼーション。