本来「modernize(近代化・現代化する)」「modernisation(近代化・現代化)」という語から派生し、「何かを“現代(モダン)/最新/適切な状態”に改める・適応させる行為、またはその変化の過程・状態」を指す。
デザインの文脈では、既存のプロダクト・サービス・インターフェース・体験などを、旧来的・時代遅れ・非効率・非適合なものから、時代・利用者・技術の現在/将来の変化に“モダン”に適応したものへと刷新・変革するプロセスを意味する。
デザイン上で関わる利用方法
モダナイゼーションはデザインにおいて以下のような観点で利用される。
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既存の資産(プロダクト/UI/UX/サービス)の評価・刷新
旧来のユーザーインターフェース、操作体験、ブランド表現、技術基盤などを「そのままでは現代の利用者/環境に合わなくなっている」と捉え、どこを「モダン化」すべきかをデザイン・分析する。 -
技術・利用者行動・デバイス環境の変化への適応
たとえばスマートフォン普及、レスポンシブ化、アクセシビリティ、インタラクションの変化、新しい素材・マテリアル、サステナビリティなどの観点を、デザイン刷新の契機とする。 -
段階的リファクタリング/段階的刷新戦略
完全にゼロからつくり直すのではなく、既存の構造を活かしながらも、“モダンな要素”を部分的に導入・刷新していく戦略(たとえばインターフェースの見直し、カラー・タイポグラフィのアップデート、操作体系の見直しなど)もデザイン側での典型である。 -
ブランド/ビジュアル・言語のアップデート
デザイン言語(ロゴ、アイコン、タイポ、色遣い、モーション)を時代や利用者感覚に合致させるために「モダナイゼーション」をキーワードに刷新を企図する。 -
サービス設計・体験設計(UX/CX)におけるモダン化
利用者期待・文脈・競合状況が変化する中で、体験設計を「昔ながらの流れ」から「モダンな流れ」へシフトするためのアプローチとして用いられる。
このように、「モダナイゼーション」はデザイン活動において、既存を「そのまま」使い続けるのではなく、時代・環境・利用者の変化を受けて「刷新/改変」しながら“現代的に/将来志向に”整えるためのキーワードである。
具体的な事例
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Webサイトを例にとると、古い HTML/CSS/固定幅レイアウトで構築されていたポータルサイトを、レスポンシブ設計・モバイル優先/アクセシビリティ対応・CMS移行・UIデザイン刷新などを通じて「モダナイゼーション」する。
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プロダクト(ハードウェア)では、旧来の家電製品のボタン操作・ランプ指示・有線接続などを、タッチ操作・スマホ連携・クラウド機能など“モダンな利用体験”に変更する設計改良。
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サービス/アプリでは、従来の銀行窓口中心サービスを、モバイルアプリ/チャットボット/API連携などを通じて“モダンな金融体験”へ転換するUXリニューアル。
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ブランド表現では、20年前のロゴ・フォント・配色を、フラットデザイン・ミニマルフォント・システムカラー化などに刷新して“今時”の印象へ変化させる。
提唱者について
デザイン領域において「モダナイゼーション」という語を特定の一人が提唱者はいなかった。社会科学の領域では、Talcott Parsons(タルコット・パーソンズ)らが「近代化理論(modernization theory)」を体系化した。
デザイン文脈では、「モダナイゼーション=近代化/現代化のための刷新」という概念は多くの設計実践やコンサルティング記事・ブログに現れており(例:「アプリケーション・モダナイゼーション」)
従って「提唱者」に関しては「特定のデザイン理論家がこの用語を最初に定義した」という形ではなく、設計・IT改修・UX/UI刷新の実務・技術文書において広く用いられてきた用語であると言える。
プロダクト/コンテンツデザインの観点で「この場面に使えるかな?」というシーンと具体的な事例
以下に、デザイン実務で「モダナイゼーション」という観点から活用できる場面と具体的な事例を挙げる。
シーン1:成熟/老朽化した製品ポートフォリオの刷新
場面説明:ある企業が、10年以上前から販売してきたハードウェア製品(例えば産業用機械・家電・医療機器など)を持っており、外見・操作系・接続方式・ソフトウェア連携が旧態依然で、利用者や競合から「使いにくい・時代遅れ」と言われている。
モダナイゼーション活用:
- 製品筐体・UIパネルをフラット・タッチ式へ変更(ビジュアル刷新)
- モバイルアプリ連携、クラウド連携、新しい通信規格採用
- 操作の直感化、アイコン・タイポグラフィ・配色を最新トレンドに更新
- サービス設計(たとえば機器のリモート監視)をUI/UX設計観点から追加
具体例:家電メーカーが「旧モデルの冷蔵庫」を、IoT接続・スマホ連携・タッチパネル操作・エコ機能表示付きに刷新。UIデザイン・ブランドビジュアルも近年のトレンドに合わせ、操作説明書も簡素化。これにより「旧型から新型へ移行」の訴求をデザインコミュニケーションとして行った。
シーン2:コンテンツ・ウェブサービスのUX刷新
場面説明:既存の企業Webサイトやサービスアプリ(情報ポータル・会員サービス・教育コンテンツなど)が、PC中心・固定幅レイアウト・旧フォント・旧配色・操作が煩雑というフィードバックを受けている。
モダナイゼーション活用:
- レスポンシブ/モバイルファースト設計への転換
- 新しいタイポグラフィ・配色・アイコンセットの導入(ブランドガイドライン見直し)
- インタラクションデザイン(ホバー・スクロール・アニメーション)をモダンに適用
- コンテンツ構造を見直し、ユーザー中心設計(UX)を適用してナビゲーションを簡潔化
具体例:教育プラットフォームが旧デザイン(横幅固定・サイドバー多数・文字情報中心)を、カードレイアウト・大きな視覚画像・モバイル縦スクロール主体に刷新。アイコン・カラーもフラットデザインに切り替え、操作ガイドも簡潔化。結果、離脱率低下・利用時間増加という効果を得た。
シーン3:ブランド体験(BX)/サービス体験(SX)の刷新
場面説明:ブランドが昔ながらの伝統的なイメージを持っており、若年層やデジタルネイティブには「古臭い」「時代遅れ」と受け止められている。サービス体験もアナログ中心で、ユーザー接点のデジタル化が遅れている。
モダナイゼーション活用:
- ブランドロゴ・シンボル・ビジュアルガイドラインの更新(ミニマル化・システムカラー化など)
- サービス端末・キオスク・スマホアプリ・Web体験を統一言語化し、UX設計を一新
- ユーザーが接触するすべてのチャネル(店舗・オンライン・アプリ)で“モダン”な印象を構築
具体例:百貨店チェーンが、紙カタログ・店頭パンフ中心から、スマホアプリ・電子チケット・AR・バーチャル試着を取り入れ、ビジュアルデザインもブランドカラーを刷新(旧ロゴ+装飾から、単色+サンセリフフォントへ)。結果「新しい百貨店」という印象に変化し、若年層の利用が増加。