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temperature テンパチュア

AIの応答の柔軟性を調整するパラメータ

AIが文章を作るとき、次に来る言葉の候補を予測している。そして、それぞれの候補に「一番ありえそうなのはコレ」「次はコレかな」と順位付けをしている。例えば「こどもが好きな食べ物は」と聞けば、「カレー」が一番可能性が高く、「パスタ」が二番手、「寿司」が三番手、といった具合だ。temperatureを低くしてこの順位付けの差をなくすことで、思いがけない回答を出させたり、逆にtemperatureをあげることで、より順位の差をつけて、堅実な回答をさせることができる。

語源・提唱者・普及者

AIにおけるtemperatureの概念は、直接的には統計力学、特に物質のエネルギー状態の分布を記述する「ボルツマン分布」にその起源を持つ。物理学において、温度が高いほど分子は激しく動き、エネルギーが高い状態を取りやすくなる。このアナロジーを機械学習に応用したのがtemperatureの始まりである。

この概念が現代のAI、特にニューラルネットワークの文脈で広く知られるようになったのは、Geoffreyジェフリー Everestエヴァレスト Hintonヒントンらの2015年の論文「Distilling the Knowledge in a Neural Network」が大きなきっかけとなった。彼らは、巨大で複雑なモデル(教師モデル)の知識を、より小さく軽量なモデル(生徒モデル)に効率的に継承させる「モデル蒸留」という手法を提案した。その過程で、教師モデルが出力する各クラスの確率分布を意図的に「なだらか」にし、正解以外の情報(例えば、犬に似た「猫」の画像に対して、「犬」という情報も持たせる)を学習できるようにした。この「確率分布を調整する」という発想が、後に生成モデルにおける応答の多様性をコントロールする手法として広く応用されることになった。

Geoffrey Everest Hinton https://ja.wikipedia.org

応答のさじ加減でAIの個性を演出

次にくる言葉の確率を調整することが、結果としてAIの性格や信頼性を調整する。例えば、製品のAIを「信頼できる専門家」にしたい場合、temperatureを低く設定すれば、AIの返事は常に正確で、事実に基づいてブレがなくなる。ユーザーはAIの発言に一貫性を感じ、安心して頼れるようになるだろう。一方で、AIを「創造的なアイデアパートナー」として位置づけたいなら、temperatureを高く設定する。すると、時には突拍子もないが、ハッとするような新しい視点をもたらす返事をするようになる。ユーザーはAIとの会話を通じて、ひらめきを得られるはずだ。

temperatureの設定範囲は数字で0.00〜2.00までが一般的だが、0.7〜1.5の範囲で調整されることが多く、その範囲を超えると使い物にならなくなってくるので注意する。

段階的に情報提供を行うオンボーディングに活用

同じプロダクト内でもtemperatureの調整を活用できる。代表的なのがオンボーディング設計での活用である。

アプリを使い始めたばかりの人には、まず基本的で最小限の知識や操作方法に絞ってレクチャーする必要があるが、慣れてきたら少しずつ応用知識を伝えていくことでスムーズなオンボーディングを実現できる。

初期段階でtemperatureを小さくすれば、「まず、画面右上の『新規作成』ボタンを押してください」というような、決まりきった正しい手順だけを案内するようになる。余計な情報がないため、初めての人でも迷うことなく基本操作を確実に覚えられる。

一方、ユーザーがアプリに慣れてきたら、今度はtemperatureを少しずつあげていく。するとAIは「テンプレートを使ったり、既存のものを複製したりする方法もあります。」といった、便利な裏技や多様な選択肢を提案させることができる。

このようにAIの応答の幅をユーザーの習熟度に合わせて変えていくだけで、誰にでも同じ案内をするのではなく、スキルに合わせたサポートを実現できる。

関連用語

  • ボルツマン分布

モデル蒸留 ( Model Distillation )

 

BtoB人事業務アプリのコンサルタント→エンジニア→BtoCのWebディレクターを経て、再度BtoB業務アプリとなる物流プラットフォームのUIUXに挑戦。オンライン/オフライン双方でのBtoBUXを改善すべく奮闘中。

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