RACI(レイシー)チャートは、プロジェクトに関わる人たちの役割分担を一枚の表にまとめるための道具である。
誰が「実行」し、誰が「最終決定」するのかなどをハッキリさせることで、「これは誰の仕事?」という混乱を防ぐ。これにより、チーム内の無駄なやり取りや作業のやり直しがなくなり、物事がスムーズに進むようになる。
仕事のボールは誰が持っているか示す
RACIチャートは、仕事における責任の所在を明確にする。具体的には、一つの仕事(タスク)に対して、関わる人を4つの役割のいずれかに当てはめていく。
* R (Responsible) = 実行する人: 実際に手を動かして作業を進める担当者。
* A (Accountable) = 責任をとる人: その仕事の最終的な結果に責任を持つ人。いわば「最終決定者」であり、必ず各仕事に一人だけ割り当てるのが重要なルールである。
* C (Consulted) = 相談される人: 専門的な知識を持っており、意見を求められる人。実行する人と話し合いながら進める。
* I (Informed) = 報告を受ける人: 仕事の進み具合や結果について、報告だけを受ける人。直接意見を言う立場ではない。
これらの役割を、縦に「やることリスト」、横に「関係者」を並べた表に書き込むことで、プロジェクト全体の役割分担が地図のように一目でわかるようになる。

語源・提唱者
RACIチャートは、特定の一人が発明したものではない。これは、会社の仕組みをより良くするための研究の中で、自然に生まれてきた考え方である。そのルーツは1950年代にまで遡り、仕事の流れをスムーズにするための様々な工夫の一つとして形作られてきた。特に、色々な部署が協力して大きなプロジェクトを進めることが増えるにつれて、「誰が責任者なのか」をはっきりさせる必要性が高まった。その中で、RACIという覚えやすく使いやすい形が広まり、今では多くの現場で使われるようになった。
責任の押し付け合いや重複作業を防ぐ
RACIチャートを導入する最大の価値は、チーム内の曖昧さをなくし、非効率な動きを減らせることにある。これにより、チームは本来の業務に集中できるようになる。
* 責任の所在が明確になる
「これは誰の仕事?」という曖昧さがなくなり、各自が自分の役割に集中できる。特に「A(責任をとる人)」が一人に決まることで、物事の最終的な判断が速やかに行われる。
* コミュニケーションが円滑になる
誰に相談(C)し、誰に報告(I)すればよいかが一目瞭然になるため、不要なやり取りや確認作業が減る。関係者全員を巻き込んだ大人数の会議を減らすことにもつながる。
* 新メンバーもすぐ状況を把握できる
プロジェクトの途中で新しい人が加わっても、この表を見ればすぐに全体の役割分担と自分の立ち位置を理解でき、スムーズにチームに合流できる。
3ステップで役割分担マップを作る
RACIチャートの作成は難しくない。プロジェクトの開始時に、関係者全員で集まって話し合いながら作るのが効果的である。
1. 「やること」をすべて書き出す
プロジェクトで必要な作業を、縦の列に一つずつ書き出す。(例:「アンケートを作る」「デザイン案を考える」「報告書をまとめる」など)
2. 「関係する人」をすべて書き出す
プロジェクトに関わるメンバーの名前や役職を、横の行に書き出す。(例:「Aさん(リーダー)」「Bさん(デザイナー)」「C部」など)
3. マス目を埋めていく
それぞれの作業について、誰がR・A・C・Iのどれに当たるかを話し合って決め、表のマス目に書き込んでいく。この時、「A(責任をとる人)」が必ず一つの作業に一人だけになるよう注意することが最も重要である。
誰のOKをもらえばいいかハッキリさせる
例えば、新しいアプリの画面デザインを決める場面を想像してみよう。以前は、色々な部署の偉い人たちからバラバラに意見が出て、デザイナーが誰の言うことを聞けばいいか分からなくなり、作業が何度もやり直しになっていた。
そこで、プロジェクトの開始時にRACIチャートを作成。「デザインの最終決定」をする人、つまり「A(責任をとる人)」はプロジェクトのリーダー一人だけ、と全員で決めた。他の偉い人たちは、途中で口を出すのではなく「I(報告を受ける人)」として、決まったことを後から報告してもらう役割に徹してもらった。
その結果、デザイナーはリーダーの判断だけを頼りに作業を進められるようになり、迷いがなくなり、仕事が驚くほどスムーズに進んだ。

関連用語
- RASCI: RACIに「S (Supportive / 支援者)」を加えたもの。「R(実行する人)」を具体的に手伝う人を表す。
- DACI: 役割の名前が少し違うバージョン。「D (Driver / 推進者)」「A (Approver / 承認者)」「C (Contributors / 貢献者)」「I (Informed / 報告先)」で分ける。特に、みんなで何かを決める時の話し合いをスムーズにすることに特化している。
- 責任分担マトリクス: RACIチャートのような、役割と責任を表形式で整理したツールの総称。