自社開発したシステムの費用は、完成後数年間にわたって償却コストとして計上され続ける。会計の世界ではこれが当たり前だが、そのせいで「収益は黒字なのに、帳簿上は赤字に見える」という状況が起きやすい。
EBITA(イービータ)とは、利息・税金・ソフトウェアや特許といった目に見えない資産の償却費用を引く前の利益で、サービスやプロダクトがどれだけ稼いでいるかを測る指標だ。よく似た指標にEBITDA(イービットディーエー)があるが、EBITAは「目に見える設備の償却コスト」は含んだうえで計算するため、より実態に近い数字が出る。
「何を引く前か」で意味が変わる
EBITAを理解するには、何を引くかで利益の数字がどう変わるかを把握するのが近道だ。利益には大まかに4段階ある。まずEBITDAは利息・税金・設備の減価償却・ソフトウェア開発コストなどの費用計上を全部引く前の利益。そこから工場や機械など目に見える設備の消耗分(減価償却費)を引いたのがEBITAだ。さらにソフトウェア・特許・のれん代などの費用計上も引くとEBITになり、最後に利息と税金も引くと最終的な純利益に近づく。
- EBITDA:商品・サービスを作るコスト(人件費・販管費のぞく)だけを引いた利益
- EBITA:EBITDAから工場や機械など目に見える設備の消耗分を引いた利益
- EBIT:EBITAからソフトウェア・特許・のれん代などの費用計上も引いた利益
- 純利益:EBITから利息と税金も引いた利益
EBITDAが「設備の消耗もソフトウェアの費用計上もすべて無視してキャッシュだけ見る」指標なのに対し、EBITAは「工場や機械の消耗は正直に計上しつつ、ソフトウェア開発費などの後付けコストだけは除外する」というバランスをとる。その分、EBITDAより保守的な数値になる。

語源・提唱者
EBITAはEBITDAと同じ歴史の流れから生まれた指標だ。EBITDAは1970年代に、アメリカのケーブルテレビ大手TCI(Tele-Communications, Inc.)のCEOだったJohn Maloneが考案した。マローンは全国にケーブルテレビ網を広げるために巨額の借金をしながら設備投資を続けた。帳簿上の利益は赤字でも、「減価償却や利息を除けば本業は黒字だ」という実力を投資家に示す必要があり、そのために生み出したのがEBITDAだ。

John Malone
引用:https://www.forbes.com/profile/john-malone/
この発想は1980年代に、借金で会社を買収する手法(レバレッジド・バイアウト)が流行したときにさらに広まった。「この会社は借金を返せるだけの稼ぎがあるか」を判断するのに便利だったからだ。EBITAはその後、特にソフトウェア・特許・ブランドなど目に見えない資産が多い業界で、EBITDAでは設備コストを無視しすぎるという批判を受けて派生した形で広がった。
開発投資が「帳簿上の損失」に化けるとき
自社でソフトウェアを開発すると、支払った開発費はその時点ではなく、完成時に「資産」として計上される。ソフトウェアは今後数年にわたって価値を生み出すと見なされるため、その価値を資産として持っているという扱いだ。ただし、資産の価値は時間とともに目減りしていく。この目減り分を毎年「費用」として帳簿に記録するのが償却で、ソフトウェアなら5年かけて均等に計上するのが一般的だ。つまり「開発費の現金は最初に払い終わっているが、P&L(損益計算書)上のコストは完成後5年間に分散して出続ける」という状態になる。ソフトウェアだけでなく、特許権・顧客リスト・会社買収時に生じるのれん代なども同じ仕組みだ。
EBITAはこの費用計上を除外して計算するため、「開発投資を最近終えた会社」と「投資からしばらく経った会社」を同じ条件で比べられる。主な活用場面は以下のとおりだ。
- プロダクトごとの収益力の比較: 複数のプロダクトや事業部門を持つ会社が、どのプロダクトが本当に稼いでいるかを判断するとき、開発コストの計上タイミングに左右されずに比べられる。
- 国際比較の整合性確保: 日本の会計基準はソフトウェアやのれん代を決まった期間で償却するが、国際会計基準(IFRS)は原則としてのれん代の規則的な償却を行わない。EBITAを使えば、異なる会計基準の企業を横並びに比較しやすくなる。
- 投資効率の評価: EBITAをもとに税の調整をした利益を「投下した資本」で割ると、投資効率を示すROIC(投下資本利益率)を計算できる。

基幹システムを内製した企業での活用
企業が、3年かけて自社の基幹システムを15億円で開発したとする。完成後、このシステムは資産として計上され、5年かけて毎年3億円ずつ費用として消化される。本業の売上から人件費・サーバー代などを引いた利益が年間4億円あっても、ここに3億円の償却コストが乗ると、帳簿上の営業利益は1億円に見える。
EBITAで見れば4億円の収益力があると判断できる。投資家や経営陣がプロダクトの実力を評価するとき、「開発が完了したばかりで償却コストが重い時期」と「償却が終わった時期」で収益力が大きく変わって見えるのは不公平だ。EBITAはその差をならして、本業の実力だけを取り出す。ニデック(旧・日本電産)が買収基準として「EV/EBITDA 7倍以下」という社内ルールを設けていたように、実務では類似の発想で使われることが多い。

関連用語
- EBIT: 利払い前・税引前利益。EBITAからさらにソフトウェア・特許・のれん代などの償却費を引いた値。
- EBITDA: EBITAから有形固定資産の減価償却費も除外した利益。M&Aで企業価値を比べるときによく使われる。
- のれん代: 会社を買ったとき、帳簿価値より多く払った分の差額。ソフトウェアや特許と同様に無形資産として償却され、EBITAでは除外する。
- ROIC(投下資本利益率): 投じた資本に対してどれだけ利益を出したかを示す指標。EBITAをもとに計算する。
- 減価償却・償却: 資産の価値が時間とともに目減りする分を毎年費用として計上する会計処理。有形資産(設備など)は「減価償却」、無形資産(ソフトウェア・特許など)は「償却」と呼ぶ。
引用元
- EBIT、EBITA、EBITDAとは?違いは? | ドイツビジネスコンサルティング
- Earnings before interest, taxes, depreciation and amortization – Wikipedia
- EBITDA: Meaning, Formula, History & Why It’s Questioned | Meyka
- John Malone—The Cable Cowboy Who Rode EBITDA | LinkedIn
- EBITDAとは?営業利益やEBITとの違い、見方や計算方法をわかりやすく解説 | クラウド会計ソフト マネーフォワード
- 日本電産のM&A手法とは? | PS ONLINE