人の代わりに仕事や作業を進めてくれるAIで、一般的なアプリは「人が命令したこと」をそのまま行うが、エージェント型AIは「自分で考えて次の行動を決める」ことができる。
たとえば、一般的なアプリが「電卓」であれば、ボタンを押せば計算して答えを出す。しかし、エージェント型AIは「宿題を手伝って」とお願いすると、どんな宿題かを考えて、必要なら本を調べ、計算し、文章を書いてくれる。ときには「これもやったほうがいいよ」と先回りして提案もしてくれる。
エージェント型AI(AI Agent)は、生成AIを含むさまざまな技術を利用しながら、
- 目的を理解し
- 自律的に計画を立て
- 必要に応じてツールを使い
- 行動を実行し
- 結果を評価する
といった「タスクの遂行」を行うシステムである。
特徴
- 自分で目標を理解して行動できる。
- 必要な道具(アプリやサービス)を使いこなせる。
- 人にいちいち細かく指示されなくても、途中の手順を組み立てられる。
デザイン・プロダクトにおけるエージェント型AIアプリケーション
エージェント型AIアプリケーションは、ユーザーに代わって意思決定や作業の一部を担うため、従来のアプリケーション設計とは異なる考慮が必要である。単なるUI操作の効率化ではなく、「ユーザーとAIが協働する関係」を設計することが求められる。
1. ユーザー体験(UX)の変化
- 従来型アプリはユーザーが操作手順を細かく指定する必要があった。
- エージェント型アプリは「ゴールを伝えるとAIが最適な手順を組み立てる」ため、UIはシンプルになり、会話的なインターフェースが中心になる。
例:
カレンダーアプリに「来週の午後で空いている時間にミーティングを入れて」と伝えると、自動的に候補を確認し、参加者に招待を送る。
2. デザインの考慮点
- 信頼性の設計:AIが自律的に動くため、結果に対して「本当に正しいのか?」という安心感を与える必要がある。確認ダイアログや理由の提示が重要である。
- 透明性の確保:AIの行動意図を可視化しないと、ユーザーが「なぜこの結果になったのか」を理解できず、不信感を抱く。
- 介入のしやすさ:AIに任せすぎず、ユーザーがいつでも方向を修正できるUIが求められる。
3. プロダクトへの応用事例
- Eコマース:ユーザーが「旅行に必要なものをそろえたい」と伝えると、航空券、ホテル、スーツケース、服などを横断的にレコメンドする。
- デザイン支援ツール:デザイナーが「カラフルで子ども向けのポスターを作りたい」と入力すると、AIが複数のデザイン案を生成し、印刷用データまで整える。
- 業務効率化:営業担当者が「来週の訪問先のリストをまとめて」と指示すると、CRMからデータを抽出し、地図とスケジュールを自動作成する。
生成AIとの関係性
生成AIは、AIエージェントの「頭脳の一部」として自然言語処理や知識生成に活用されるが、エージェント自体はより広い概念である。
- 生成AI = 能力(コンテンツを生み出す力)
- エージェント型AI = 行動主体(目標達成のために動く存在)
つまり、生成AIはエージェント型AIの「道具」や「頭脳の部品」として機能する。
エージェント型AIは、生成AIを使って考えたり説明したりしながら、最終的には「行動を伴う」点が異なる。
- 生成AI:脳の一部(言語や表現の能力)
- エージェント型AI:全身(目標設定→計画→行動→振り返り)
- 関係:生成AIはエージェント型AIを支える「部品」として組み込まれている
まとめ
エージェント型AIアプリケーションは、ユーザーの「操作」ではなく「意図」を中心に設計することが鍵である。
プロダクトデザインにおいては、信頼性・透明性・介入可能性を意識した体験設計が不可欠であり、それによりユーザーとAIが協働する新しいUXが実現される。