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ワーキングメモリ Baddeley's model of working memory

感覚器から送られた情報を、一時的に維持して空間や図形と言語に分けて考える仕組み・その容量や保存領域

感覚器(刺激を感受して神経系に伝える器官)から送られた外部の情報を、一時的(15秒~20秒)に維持して「空間・図形・色」と「音・言語」へ分けて考える仕組みのこと。日本語では、作業記憶または作動記憶という

提唱者

AtkinsonアトキンソンShiffrinシフリン氏が1968年に提唱した記憶の多重(ニ重)貯蔵モデルの短期記憶に代わるものとして、Baddeleyバドリー Hitchヒッチ氏が1974年に提唱した。

元になった記憶の多重(ニ重)貯蔵モデル

アトキンソン&シフリン氏が提唱した記憶モデル

進化するワーキングメモリの構成

脳神経研究が発展したことでバドリー氏は2つのモデルを提唱している。1つは1974年に提唱された中央実行系、空間スケッチパッド(視覚空間記憶)、音韻ループという3要素モデルである。新しい情報を中央実行システムが「空間・図形・色」を空間スケッチパッドへ送り、「音・言語」を音韻ループへ送りそれぞれのシステム内で処理される。

ワーキングメモリの原型3要素モデル

第1世代:バドリーの3要素記憶モデル(1974年)中央実行系・音韻ループ・空間スケッチパッドの関係図

2つ目のモデルは3要素に経験やエピソードと新しい情報を関連付けるエピソードバッファを加えた4要素モデルで2000年に発表された。エピソードバッファの追加によりワーキングメモリと長期記憶の関連性の証明が見込まれる。これら2つのワーキングメモリモデルを総称して多要素モデル(The multi-component model)という。(1974年に提唱されたモデルを第1世代、2000年に提唱されたモデルを第2世代ともいう。)

エピソードバッファが加わった4要素モデル

第2世代:4要素モデル(サブシステムとしてエピソードバッファが追加された)

ワーキングメモリを構成する4つの要素

中央実行システム(The central executive)

ワーキングメモリのメイン機能でサブシステム(音韻ループ、空間スケッチパッド、エピソードバッファ)に指示を出す役割である。

中央実行システムの主な役割

  • 入力された情報の記録、古い情報の置き換える
  • 情報をエピソードと結び付ける
  • サブシステムの切り替え・調整する
  • 出力する反応の抑制する
  • 選択的注意(注意コントロール・集中)を行う

視線空間スケッチパッド(The visuospatial sketchpad )

空間・図形・色の情報を短い間保持する。

エピソードバッファ(The episodic buffer)

長期記憶とワーキングメモリをつなぎ、行動をサポートする補助システム。ワーキングメモリの新しい構成要素でバドリー氏が2000年に追加した。

音韻ループ(The phonological loop)/維持リハーサル

引用:音韻ループ 耳で聞いた言葉は直接音韻ストアに格納されるが、目でみた言葉は話し言葉に変換されてから音韻ストアに格納される

言葉を理解するための仕組みで、音韻ストアと調整制御プロセスという2つの要素で成り立っている。短い間(1~2秒)記憶を保つリハーサル(想起)の一つ。

音韻ストア Phonological Store(内部の耳)

音として認識した言葉を一時的(1~2秒)に保持する。

調整制御プロセス Articulatory control process(内なるの声)

音韻ストアから情報を取り出して繰り返し音として再生する。目でみた言葉は音に置き換えて音韻ストアに格納する。

例えば、電話番号を覚える時、目で見た「1234…」を「いちにいさんよん…」という発声する音に変えて繰り返し再生している間は覚えているが「いちにいさんよん…」という音を再生しなくなると忘れてしまう。

ワーキングメモリと短期記憶の機能の違い

「短い間の記憶」という同じ特徴を持つことから混同される短期記憶と作業記憶だが機能が違う。短期記憶(STM)は記憶の多重(ニ重)貯蔵モデルで提案された記憶の機能で、短い間情報を保持するための貯蔵庫だ。一方、ワーキングメモリは一時的に情報を保存して分解し、反応を出力する機能である。

言葉と図形・空間が一致しないと人は迷う

直感的に操作できるということは、ユーザーが短い時間で情報を理解し、理解した情報と矛盾せず操作できるということだ。ユーザーが画面を見て理解するためには、「このボタンを押したら次のページに遷移する」という自然に人が行う予測を裏切らない設計にすることが大切である。

関連用語

参考文献

UX DAYS TOKYO オーガナイザ/デジタルマーケティングコンサルタント 著書 ・ノンデザイナーでもわかる UX+理論で作るWebデザインGoogle Search Consoleの教科書 毎年春に行われているUX DAYS TOKYOは私自身の学びの場にもなっています。学んだ知識を実践し勉強会やブログなどでフィードバックしています。 UXは奥が深いので、みなさん一緒に勉強していきましょう! スローガンは「早く学ぶより深く学ぶ」「本質のUXを突き止める」です。

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