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信念の保守主義 Belief Perseverance

一度形成された信念を、たとえそれを否定するような新しい情報や明確な証拠が示されても、なお保持し続ける傾向

初期の印象や判断に固執しやすく、誤情報の訂正後もその信念が残りやすい心理特性がある。

提唱者

この現象は心理学の分野で古くから知られており、特定の単一提唱者はいないが、Lee RossMark Lepperらの実験的研究により広く認知されたものである
これらの研究は、信念が根強く残る様子を示している。

デザインにおける活用と具体事例

① ユーザーテストと仮説検証

問題点:初期のインタビューやテスト結果で得られた仮説に固執し、後から出た反証データを無視すると、偏った設計判断になる。
対策:反証ケースも積極的に収集し、仮説が崩れた際には設計を見直す文化を浸透させる。

② コンテンツ改善プロセス

問題点:「このキャッチコピーは響く」という初期判断を捨てられず、ABテストで反応が悪くても運用し続けるとCVRが下がる。
対策:公開後のパフォーマンスを継続的に追い、改善が必要であれば迅速に変更を実行する。

③ ビジネス意思決定

問題点:特定機能やプロダクトが「成功する」と信じ込んで投入し、初期利用数が少ないときに撤退できなくなる。
対策:エビデンスに基づいたKPI管理を設定し、成果が出なければ仕様変更や撤退を検討するルールを導入する。

シーンと具体事例

シーン:マーケ会議で「この訴求文句、絶対響く」とチームで一致した直後の意思決定。

改善案:まず小規模でABテストを実施し、定量成果(クリック率や成約率)から判断する体制をまず構築する。仮に効果がなければ、早めに改善案を検討することを合意する。

デザイン観点でのチェックポイント

  • 初期仮説に固執しない:最初のインサイトは仮説として扱い、継続した検証を前提とする。

  • 反証データを可視化:否定的なデータもダッシュボードに載せ、多面的に意思決定できるようにする。

  • フィードバック・ループの重視:仮説→検証→再構築のサイクルを設計プロセス内に組み込む。

信念の保守主義に対しては、データ・反証・フィードバックを中心とした開かれた設計文化を築くことで、より柔軟で成果につながるプロダクトやコンテンツづくりが可能となるである。

「刷り込み」と「信念の保守主義」の違い

「刷り込み」と「信念の保守主義」はどちらも人の思考や行動に影響を与える心理現象ですが、その起こる時期働き方に明確な違いがあります。以下に、わかりやすく対比して説明します。

刷り込み(Imprinting)

  • 定義:ある時期に経験した情報や出来事が、その後の考え方や行動に強く影響を与える現象。
  • 特徴
    • 幼少期や初期体験に強く起こる。
    • 情報の内容より「初めての経験だった」ことが記憶に残る。
    • 無意識に「これが普通だ」と感じてしまう。
    • 子どものころにWindowsを使っていた人が、大人になってもMacよりWindowsを選びがち。
    • 初めて触れたアプリの操作体系が標準だと思い込む。

信念の保守主義(Conservatism Bias)

  • 定義:既に持っている信念や知識を過大に評価し、新しい情報を軽視または拒否する傾向。
  • 特徴
    • ある程度の知識や経験を持っている人に起こる。
    • 情報の「更新」に対して慎重すぎる。
    • 自分の理解が正しいと思い込み、変化を避ける。
    • 統計的に間違っていても「長年の経験ではこうだ」と主張する。
    • ユーザーインタビューの結果より、自分の感覚を信じる。
項目 刷り込み 信念の保守主義
起こる時期 主に初期体験 経験が蓄積された後
影響の対象 最初に接したものを正しいと感じる 持っている信念を守ろうとする
柔軟性 非常に低い(そもそも気づかない) 新しい情報への抵抗があるが論理で変わる可能性あり
UXデザインでの注意点 最初の体験が後の行動を決める → 初回体験は慎重に設計 新UIに対して拒否感がある → 変化に理由づけが必要

 UXやプロダクトデザインでの使い分け

  • 「刷り込み」を意識する場面:オンボーディングや初回操作の設計。「最初にどう学ぶか」が、その後の全体的な操作理解や愛着に影響。
  • 「信念の保守主義」を意識する場面:既存ユーザーに対するUI変更時。新機能や新UIの導入時に、「なぜこれが良いのか」の説明や段階的導入が有効。

一言でまとめると…

  • 刷り込みは「最初の情報に引っ張られる」。
  • 信念の保守主義は「変わることを拒む」。

どちらも、ユーザーの体験や情報設計を左右する重要な心理バイアスである。

UX DAYS TOKYO オーガナイザ/デジタルマーケティングコンサルタント 著書 ・ノンデザイナーでもわかる UX+理論で作るWebデザインGoogle Search Consoleの教科書 毎年春に行われているUX DAYS TOKYOは私自身の学びの場にもなっています。学んだ知識を実践し勉強会やブログなどでフィードバックしています。 UXは奥が深いので、みなさん一緒に勉強していきましょう! スローガンは「早く学ぶより深く学ぶ」「本質のUXを突き止める」です。

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