
ボディーストーミングの様子(引用:Gamestorming)
アイデア出しの手法ではブレインストーミングがよく知られているが、体を使って実演しながら行うアイデア出しの手法にボディストーミングがある。ボディストーミングは製品・サービスが実際に利用される場所のコンテキストや物理的な相互作用を理解しながらアイデア出しを行うことができる。サービスを利用するユーザーの体験を物語として演じたり、現実に近いシチュエーションで実演を行うことから、利用環境のコンテキストが明確になり、ユーザーの共感を生みやすいアイデアを出すことが出来る。
ボディストーミングの方法
ボディストーミングには4つの段階がある。
1. 観察
製品またはサービスが使用される場所を定義する。定義した場所に行き、人々がどのように行動・やりとりするかを観察する。ユーザーになりきって周囲と交わり、一緒に行動をする。
2. 準備
観察した現場でボディーストーミングを行う準備をする。はじめに、観察したシチュエーションを紙に書く。書き出したシチュエーションをもとに、ロールプレイのシナリオを作成する。
次に、シナリオに合わせて必要な小道具・プロトタイプを制作する。小道具は、ダンボールやスケッチ、置いてある家具など身近に手に入るもので構わない。
最後に、ロールプレイに必要な人物や役割を定義する。ハードウェア・ソフトウェアの製品だけでなく、顧客やユーザー、トラブルシューティング、観察者の役割も忘れずに設定する。
3. ロールプレイ
準備で割り振ったそれぞれの役割で即興でシナリオを演じる。
観察者はロールプレイを一時停止させて、メモやスケッチ、写真を撮り、状況を記録していく。ロールプレイの最中に、新たなシナリオを思いついた場合は、新たなシナリオで再度ロールプレイを行う。
4. 振り返り
ロールプレイが終わった後、振り返りを行う。新たに生まれた疑問・課題や、アイデアを明らかにする。
セルフレジのボディストーミング例
ボディストーミングでアイデア出しをする例として、スーパーマーケットのセルフレジにまつわるボディストーミングを挙げる。
まず、実際にスーパーマーケットに行き、人々が買い物している様子や店員の様子を観察する。
観察をした後、シナリオ・小道具・役割の準備をする。
シナリオは観察に基づいて、「ベビーカーを押した女性がカゴを持って買い物をして、セルフレジで決済する」とした。
シナリオに必要な小道具のセルフレジは段ボールと紙のスケッチで簡易的に作成し、カゴはスーパーに備え付けのものを利用することにした。ベビーカーを押す人、赤ちゃんの役割の人、観察者の役割を割り振った。
準備が完了次第、ロールプレイを演じる。ロールプレイではユーザーになりきって行動することが大切になる。ロールプレイを見ている観察者は、演者がユーザーの行動を演じる様子から発想し、新しく試したいアイデアが生まれた場合は、追加のシナリオをその場で作成する。ここでは「決済中に赤ちゃんが泣き止まず、列が出来てしまい決済を中段させる」を新たなシナリオとして追加した。このように、アイデア発想のたびに新たなシナリオを追加で演じる。
最後に、一連のロールプレイを振り返り、課題や気づきを明らかにする。
ボディストーミングのメリット
ユーザーの共感を生むアイデアが出やすい
実際に製品またはサービスが用いられる場所に行って(難しい場合は空間を再現して)ロールプレイを行うため、物理的なコンテキストを体感しながらアイデア出しを行うことができる。例えば、「混雑した飛行機内で荷物を床から頭上の物置に置く」というシナリオの場合、実際の人混みや身長差による負荷を理解することができる。こうしたコンテキストを身を持って実感しながらアイデア出しを行うため、ユーザーの共感を生むアイデアが出やすくなる。
素早く改善することができる
ボディストーミングでは、ロールプレイをしながらその場で課題を見つけ、新たなアイデアを出し実践することができる。小道具やプロトタイプもダンボールやスケッチなど簡易なものから作成することができるため、素早く低コストにアイデアの検証が可能だ。