人は音声と視覚的な形を結びつけてしまう性質がある。下の図で「どちらがブーバでどちらがキキか?」という質問をしたところ、98%の人が曲線的な左の図形をブーバ、ギザギザな右の図形をキキと答えた。
この性質のことを、ブーバ・キキ効果といい、1929年にドイツの心理学者で、ゲシュタルト心理学の創始者の一人でもあるWolfgang Köhler氏が提唱した。マルマ・タケテ効果ともいい、この場合は大多数の人が左の図形をマルマ、右の図形をタケテと答えた。
人は言語に関係なく音からイメージする。この現象を音象徴といい、「k」「t」の音(日本語:「カ行」「タ行」)に角張ったイメージを、「m」「n」の音(日本語:「マ行」「ナ行」)に柔らかい印象を持つ。また、母音が「u」の音(日本語:「ウ」)には丸いものと結びつける傾向がある。
ブーバ・キキ効果はキャラクターにも当てはまる
ブーバ・キキ効果は人やキャラクターの名前にも当てはまる。心理学者のDavid M. Sidhu氏とPenny M. Pexman氏は、名前・形状・音が人やキャラクターの性格を具体的にイメージするという研究を行った。
研究によると、曲線的なシルエットにはモーリーやボブといった柔らかい印象を持つ名前を、角張ったシルエットにはケイトやカークといった鋭い印象を持つ名前を連想しやすくなり、柔らかい印象を持つ名前からは親しみやすい性格を、鋭い印象を持つ名前からは厳格な性格を関連づけるという。
つまり、曲線的なキャラクターは親しみやすい性格、角張ったキャラクターは厳格な性格をイメージするのだ。
Webサイトのデザインにも生かされる
ブーバ・キキ効果はキャラクターと同じようにデザインにも応用されている。Webサイトのボタンも角張ったものよりも曲線的な方がフレンドリーな印象を与え、クリックされやすいと考えられた。
Amazonのボタンが角丸になった
Amazonの購入ボタンは、下図の左のように立体感のあるスキューモーフィックのデザインだったのが、2021年10月に右のような角丸のピル型のフラットなデザインになった。
アップルのデザインも角丸が多くなった
iOSでもAmazonと同じようなデザインの変更があった。
2021年の10月にリリースされたiOS15では、旧バージョンのiOSよりも角丸が多く使われるデザインが採用された。iOS15のカレンダーアプリは、角丸が多く使われたデザインになっている。
キキの中にいるからこそ、ブーバが目立つ
iOSやAmazonのデザインが角丸になったことや、人に良い印象を与える丸みを帯びたボタンはクリックされやすい。という神話を鵜呑みにしてすべてのボタンを角丸にするのは危険である。
丸みを帯びたボタンが目立つのは、角張ったボタンの中にあるからだ。実際、Amazonでは購入に関するボタンのみが角丸になっている。人に良い印象を与えるからといって、角丸ボタンだらけにしてしまってはどれも目立たなくなってしまう。
関連用語
参考サイト
- Rounded or Sharp-Corner Buttons?. The Bouba/Kiki Effect & character… | by Taime Koe | UX Planet
- #12 Rounded buttons, lighters & design intent
- Amazon Is Testing Rounded, High-Contrast Buttons. That’s a big deal for UX design.
- Make sense of rounded corners on buttons | by Shan Shen | UX Collective
- https://davidmsidhu.files.wordpress.com/2020/03/sidhu-pexman-2019-1.pdf