日本語で「カーム」は「おだやか」などと翻訳される。製品を設計する際、通知や表示方法と言ったテクノロジーとユーザーとのコミュニケーションの取り方も設計する必要があるが、その際に考慮されるのが「カーム・テクノロジー」である。
「ユビキタスコンピューティング」を提唱した、Mark Weiser氏とJohn Seeley Brownによって1996年に作られた。増えていくデバイスが逆に私達の生活で邪魔になることを憂慮した内容が、あらゆるコンピューター製品を生み出した研究開発企業「Xerox PARC」にて発表された。
「カーム・テクノロジー」の原則
- ユーザーがカームテクノロジーに注意をはらうのは最小限で、ユーザーの環境や行っている動作を妨害しない。
- タスクは人間が行い、カームテクノロジーは情報を静かに提供する必要がある。
- カームテクノロジーは、フォーカスされても、すぐ周辺に戻れるようにしなければならない。
- カームテクノロジーは、最高の技術と最高の人間性を拡大させる必要がある。
- カームテクノロジーは、伝えることはできても話す必要はない。
- カームテクノロジーは、動作が失敗した時でも止まらずに動く必要がある。
- 問題を解決するための最低限必要な技術を考える。
- カームテクノロジーは、社会規範を重んじる必要がある。
VUI/Iotとカームテクノロジー
VUI(ボイス・ユーザーインターフェイス)ではカーム・テクノロジーを考慮する場面が多いと言える。
カーム・テクノロジーの例
音の鳴るヤカン
沸騰すると音のなるタイプのヤカンは、水を入れて火にかけたあとはその存在を忘れることができる。沸騰して音を鳴らすまで、ユーザーの注意を引くことはない。
ルンバ
ロボット掃除機のルンバは話さず、シンプルな音だけで状況を教えてくれる。
掃除が終わった時は嬉しそうな音、問題が起きたり本体の掃除が必要になった場合は淀んだ音で表現してくれるので、言語がなくても理解することができると言える。
また、オレンジとグリーンのライトでもルンバの状態を伝えてくれる。
カーム・コミュニケーションの例
「ハプティック・アラート」
人間の触覚を利用して、振動などを通して視覚的や聴覚的ではない方法で情報を伝えることができる。
Apple Watchにこの「ハプティック・アラート」が利用されている。ユーザーは自分で「ハプティック」この場合は振動の強度を強めることができる。
「ステータスシャウト」
「ステータス」は「状態」、「シャウト」は「叫ぶ」を意味する。つまり、状態を大きな声でつたえるを意味する。
よって、「ステータスシャウト」は緊急性あるものに利用される。
「ステータス・シャウト」という項目は非常事態の情報発信用に確保しておく必要がある。
煙報知器、湯沸かし器、電子レンジはすべてシャウトして人々に今の状態を警告する。 救急車はステータス・シャウトを使って、人々に緊急事態の発生を知らせている。
ポップアップ
ポップアップアラートはおそらくアラートの最も一般的な形式だが、正しく使用されていないと人々を圧倒させてしまうことがある。
個数や頻度などは他のアラートとの兼ね合いを考えて設計する必要がある。