より大きなカテゴリに属している選択肢の方が、実際の確率や価値にかかわらず「好ましい」「可能性が高い」と誤って認識されやすい傾向を指す。
提唱者
提唱者:Nadav Klein & Ed O’Brien(シカゴ大学)
論文:”The Category Size Bias in Probability Judgments”
掲載:Journal of Experimental Psychology: General, 2016
実験例
参加者に「赤・青・緑のボールのそれぞれの箱があり、この箱全体で当たりがあります。」と説明し、それぞれの色のボールの数は以下のように設定されていると説明した。
- 赤:6個(少ない=小さなカテゴリ)
- 青:12個(中くらいのカテゴリ)
- 緑:30個(多い=大きなカテゴリ)
その上で、「どの色のボールの箱から、くじを1回引きますか?」と尋ねた。
「当たりのボールがどの色(箱:カテゴリ)に入っているか」は参加者に知らされておらず、完全にランダムである、という前提である。
しかし、多くの参加者は「緑のボールが多いから、当たる確率も高そうだ」と考えて緑を選んだ。
色(箱:カテゴリ)を選んだ後にボールを1つ引くため、どの色を選んでも当たる確率は同じである。にもかかわらず、「ボールの数が多い=当たりやすい」と直感的に感じてしまったという実験。
具体的な内容と事例
デザインにおける利用方法と例(プロダクト・コンテンツ)
1. ECサイトにおけるカテゴリラベル設計
大きなカテゴリ「スマートフォン(500商品)」小さなカテゴリ「タブレット(50商品)」
消費者は商品数の多いスマートフォンカテゴリの商品を「選択肢が豊富で良い商品がある」と過大評価しがち
大きいカテゴリ(例:「家電」など)の中に入っている商品は、それだけで「人気がある」「信頼できる」と判断されやすくなる。
商品レビューで「◯◯カテゴリの売上No.1」と表示されていると、「カテゴリサイズが大きいから価値がある」と誤認される。
2. サブスクリプションプランの選択肢提示
「もっとも多くの人に選ばれているプラン」と表示された中プランが、実際には価格・機能面で最もコストパフォーマンスが悪くても、「そのプランは多くの中から選ばれている(=価値が高い)」と錯覚されやすい。
3. 求人情報やランキング型UI
「◯◯業界No.1」「◯◯件の中から選ばれた」などの表現は、カテゴリーのサイズ感を強調することで意思決定に影響を与える。
4.レストランメニューの構成
大きなセクション「ピザ(20種類)」小さなセクション「サラダ(5種類)」
顧客はピザセクションが大きいことで、そのレストランを「ピザが美味しい専門店」と認識し、ピザを選ぶ傾向が高まります
5.求人サイトでの職種分類
大きなカテゴリ「IT・エンジニア(1000件)」小さなカテゴリ「デザイナー(100件)」
求職者はIT職種の求人が多いことで、「IT業界は需要が高く、良い条件の仕事がある」と判断しがちです
6.スーパーマーケットの売り場面積
大きな売り場冷凍食品コーナー 小さな売り場オーガニック食品コーナー
消費者は売り場面積の大きさから、冷凍食品の方が「種類が豊富で選ぶ価値がある」と感じやすくなります
7.ニュース報道の時間配分
長時間報道政治ニュース(30分)短時間報道科学技術ニュース(5分)
視聴者は報道時間の長さから、政治問題の方が「より重要で影響力がある」と認識する傾向があります
ダークパターンにならないデザインを
ユーザーの理解度を考慮し、ナッジでのデザインとダークパターンにならないための見極めをしてデザインしていきましょう。