TOP UX用語 心理学・行動経済学・脳科学 認知的流暢性

認知的流暢性 cognitive fluency

一見して認知しやすく、脳内で処理しやすいこと

人は一目見て分かりやすい情報を好み、逆に何か分からないものに対してはそれ以降見向きもしない傾向がある。
図は、クラシルのスマートフォンアプリで紹介されているパンケーキのレシピである。左の文章だけの画面は難しく感じるが、右の図のように動画が入ると頭に入りやすく、簡単にパンケーキが作れそうな気がする。

クラシルのアプリで紹介されている、パンケーキのレシピ。左は文章、右は動画。

クラシルのスマートフォンアプリで紹介されている、パンケーキのレシピ。左は文章、右は動画。

流暢性とは脳が情報を処理する容易さのことで、流暢性の高い情報に対して真実、好感が持てる、頻度が高い、有名、カテゴリーが優れている、情報源が明確であるなど好意的な判断をする。

認知的流暢性が高くなる要因として、視覚や聴覚などの感覚器官で認識しやすいものや、すでにある知識と関連し、理解しやすいということなどが挙げられる。

見やすいもの、発音しやすいものが受け入れられる

人が認知的流暢性の高い情報を好むのは、脳を自動化モードにする「システム 1」で大部分を過ごしていることに関係している。思考が必要な「システム2」は考えなくてはならず、直感的で理解しやすい「システム1」に判断できるものを好意を持つ傾向がある。

以下に、認知的流暢性が高くなる例を2つ紹介する。

見やすいフォントの方が読みやすく感じる

同じ文字でも、ハッキリとした見やすいフォントで書かれている方が読みやすく、簡単だと感じやすい。

心理学者のHyunjin Songソン・ヒュンジン氏とNorbert Schwarzノアバート・シュワルツ氏による研究では、読みにくいフォントで書かれたエクササイズやレシピはより複雑だと感じることを発見した。

読みにくいフォントで書かれている下の方が複雑に感じることが研究で分かった

読みにくいフォントで書かれている下の方が複雑に感じることが研究で分かった

発音しやすいと記憶に残りやすい

リズムの良い(日本語だと5・7・5)スローガンは自然と覚えているように、人は言いやすい名称に好感を持つ。図はコンプライアンス標語コンテストで上位入賞した作品である。発音しやすく、韻を踏んでいて、記憶に残りやすく感じるのではないだろうか。

心理学者のAdam L. Alterアダム・オルター氏とDaniel M. Oppenheimerダニエル・オッペンハイマー氏が2009年に行った研究では、企業が上場して最初の数週間は、発音しやすい名前の銘柄の株価が上昇したという結果が出ている。また、心理学者のNathan Novemskyナザン・ノベンスキ氏らが行った別の研究では、言いにくい名前の商品は消費者が選択を先延ばしする、最初から選択されているものを選ぶ可能性が高いことを示している。

直感で理解したことを正しいと誤解してしまうことも

認知的流暢性が高く、直感で理解したことが必ずしも正しいとは限らない。

図の問題は、直感で解いてしまうと10セント(0.1ドル)になってしまうが、実際の正解は5セント(0.05ドル)だ。「少し考えればわかる」と感じるのは、システム1を使って無意識に解いたものを、システム2で考えて解いて上書きしているためである。

直感で解くと間違えてしまう問題(直感で解くと0.1ドルになってしまうが、正解は0.05ドル)

直感で解くと間違えてしまう問題(直感で解くと0.1ドルになってしまうが、正解は0.05ドル)

Oppenheimer氏らの研究では、フォントを読みにくいものにすると正解率が高くなるという結果が出た。フォントを読みにくくして認知的流暢性を下げると、直感に頼らず考えるようになるためと言われている。

下の図は上の問題を読みにくいフォントに変更し、日本語訳を削除した。英語が母国語ではない日本人にとっては何の問題だか分からず、少し考えてしまうだろう。

上と同じ問題だが、読みにくいフォントにし、日本語訳を削除した

上と同じ問題だが、読みにくいフォントにし、日本語訳を削除した

あえて認知的流暢性を低くし、ユーザーに考えさせる

認知的流暢性を下げ、ユーザーに少し考えさせることによって誤った判断をしないようにする事例もある。Pagtagoniaでは購入済みの商品が返品されるのを防ぐため、似たような商品を並べて表示し、ユーザーがどの服を買うか決断するのに時間をかけるようにしている。(David Dylan Thomas (2020) Design For Cognitive Bias A Book Apartより引用)

似たような商品を並べることで、流暢性を下げているPatagoniaのサイト

似たような商品を表示し、流暢性を下げて考えさせる例(Pagtagonia)

正確な情報を分かりやすく表現しよう

人は直感的に理解できる認知的流暢性が高い情報を好む。学術的な根拠に基づいているが難しい文章で書かれている情報よりも、真偽はともかく分かりやすく書かれているまとめサイトの情報を見てしまう。

読みやすいまとめサイトの情報が誤っていることがあるように、直感で理解しやすいことが必ずしも正しいとは限らない。正しく分かりやすい情報を提供すると価値が上がる。そのためには、正確な情報を集めてから分かりやすい表現にすることが必要である。

参考文献

David Dylan Thomas (2020) Design For Cognitive Bias A Book Apart

参考サイト

2つの思考モード(システム1・システム2)

 

フリーランスのエンジニア。 2001年東京都立大学(現首都大学東京)経済学部卒業。独立系ソフトハウス(システム開発)、株式会社シンプレクス(金融機関向け取引システムの開発・運用)を経て2011年よりフリーランス。フリーランスになってからは、スマホアプリ、サーバーサイド(Java,Railsなど)と様々なプロジェクトで開発に携わる。現在は会社員時代にお世話になった企業様でRPAプロジェクトで開発を担当している。 ダイエットのためにランニングとヨガを5年ほど続けているが、どちらもガチになる一方で全く痩せないことが最近の悩み。

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