TOP UX用語 心理学・行動経済学・脳科学 同調

同調 Conformity

他者や集団の行動や意見、もしくは自分に対する期待などによって、本来の自分の見解と異なっていたとしても、それらに合わせて自らの行動や意見を変えてしまう現象のこと。

人が同調するかの実験

人が同調するかの実験として、心理学者のSolomon Eliot Aschソロモン・エリオット・アッシュが行った「アッシュの同調実験」を紹介する。

ソロモン・エリオット・アッシュの肖像

ソロモン・エリオット・アッシュ(出典元:Wikipedia

ひとつの部屋に8名の大学生を集めて実験を行った。8名のうち7名はアッシュの指示に従う「サクラ」で、残りの1名が実際の被験者である。

彼らに、2枚のカードを提示して正解を出してもらう問題を行ってもらった。1枚目のカードは、基準となる『線』が、2枚目には異なる3つの長さの『線』が書かれている。集められた8名は、2枚目のカードから基準線と同じ長さのものを選んでもらった。回答は、ひとりずつ順番に他の回答者にも見える状態で行った。

質問:左の基準線と同じ長さの線を選んでください。

このような問題をサクラの7名に先に回答をさせると、明らかに間違っていたとしても8番目の被験者もその誤った回答を選ぶ傾向が確認された。

いくつかの問題を行い、最終的にすべての質問に正解をした被験者は全体の約25%しかいなかった。少なくとも一回以上「サクラ」の意見に流されて不正解を選んだのは、75%もいた。なお、被験者1人のみで同じ実験を行った場合には、94%が全問正解をしている。

アッシュの同調実験と同じ実験を一人で行った時の結果グラフ

被験者が「サクラ」に同調をし、不正解を選ぶ確率は約3分の1であったのは、一見すると少ないと言う見方もあるが、『他者に従うことを強制されていない』状況であることに留意する必要がある。

このような、他者や集団に影響されて、自分の意見や行動を変えてしまうことを「同調」という。

『正しくありたい』、『好かれたい』という心理

同調が生まれる原因として、M.Deutsch & H.B.Gerardドイッチとジェラードは以下の2つを提唱している。

情報的影響

『正しい判断を行いたい』という欲求から、他者から意見や行動を客観的事実の基準として捉えてしまうこと。自らの判断に自信が持てない状況で多数意見が存在するときに、それを正しいものとして受け入れて、同調が生じる。端的に言ってしまうと「正しくありたい」という心理状況。

規範的影響

『他者からの欲求に応えたい』という欲求から、集団規範に従い、その集団に適合しようとするもの。周囲と異なる言動を取ることで、和を乱し拒絶されることを避けようと同調が生じる。端的に言ってしまうと「周りの人から好かれたい」という心理状況。

これらの影響を読むと、多数派の支配や集団圧力による抑圧のマイナス要因になるものだと捉えてしまうが、その反面、社会的集団の秩序を守ることが出来るというプラス要因にもなっている。また、同調を行うことを「同調行動」と呼ぶが、他者への好意を伝える際に使われることもある。

3つのタイプの同調

同調は、影響の受け方によって、以下の3種類に分けられている。

追従の同調

他者や集団から好意的な評価を得る(好かれたい、場の空気を壊したくないという配慮も含まれる)ために、相手の意見に納得していないにも関わらず、自らの意見を変えてしまうタイプの同調。表面的に意見を合わせているのみなので、そこから離れたり、周囲の状況が変わると同調効果は消え、本来の意見に戻る。

同一視の同調

相手と同じ考えでありたいという願望から、積極的に自分の意見を変えてしまうタイプの同調。好きな人物や憧れている人物に対して生じる傾向がある。相手の考えを受け入れ、満足のいく関係性を維持するために行われる。相手に対する興味が失われると、自発的に同調をやめる。

内面化の同調

相手の意見が論理的に考えて自分のものより正しい、優れていると判断し納得をし、自らの意見を変えるタイプの同調。相手の意見を自分のものといて取り入れるため、より良い意見の提示がない限り変わることは少ない。

集団への調査に対する注意点

UXデザインやマーケティングの現場では、しばしばフォーカスグループなどの集団に対する調査が行われている。その際にも、「同調」が働く可能性がある点を忘れてはならない。すべてを真として受け止めずに、被験者が回答した内容は本当にその人自身の意見なのか、モデレーターは周囲をしっかりと観察する必要がある。

「UX用語」のカテゴリー