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クリティカルユーザージャーニー Critical user Journey

ユーザーの体験の中で特に「感情が大きく動いた瞬間(=クリティカルモーメント)」に注目し、その背景や要因を深く掘り下げて理解するための手法

クリティカルとは「批判的な」「危機的な」「重大な」という意味で、ユーザーエクスペリエンス(UX)設計とプロダクト開発において、ユーザーがプロダクトやサービスの主要な目標を達成するために行う最も重要なアクションを特定し、最適化するために使用される概念。クリティカルユーザージャーニー(CUJ)と略される。

ユーザーが、コアタスクを完了するために実行する必要がある一連のステップであり、ユーザーとビジネスの両方に価値をもたらす。
これらのジャーニーが不完全であったり、不満が生じたりすると、ユーザー満足度、リテンション、または収益に重大な影響を与える可能性がある。

クリティカルユーザージャーニーが意味するもの

クリティカルユーザージャーニーは、体験全体ではなく、「印象に残った出来事」「感情が動いた出来事」にフォーカスする。
インタビューなどでユーザーの語り方などを通じて、それが起きた文脈や意味を掘り下げ、定量よりも定性的な分析を重視する。

例えば、サービス改善のヒントを見つけたい時に、「なんとなく満足してない」の原因を掘り下げ、ユーザーが実はどこでつまずいていたのかを明らかにする。
医療、教育、ライフイベント(引っ越し、結婚、離職など)といった感情的な体験が重視され、感情の起伏が大きい領域やサービスで有効的である。
行動や数字だけではわからない、「なぜそれが印象に残ったのか?」ユーザーリサーチの深掘り・本音に迫るときに使う。

クリティカルユーザージャーニーの特徴

  • 目標主導型:ユーザーが意味のある目標(例:航空券の予約、送金、アカウントの開設)を達成できるようにすることに重点を置いている。
  • 高いインパクト:コンバージョン、リテンション、ユーザー満足度などのビジネス成功指標に結びついている。
  • クロスファンクショナル: 多くの場合、デザイン、プロダクト、エンジニアリング、コンテンツの各チーム間の連携が必要となる。
  • 測定とテスト済み: 多くの場合、ユーザビリティテスト、A/Bテスト、パフォーマンス追跡に重点が置かれる。

カスタマージャーニーマップとの違い

項目 カスタマージャーニーマップ クリティカルジャーニー
フォーカス 全体の流れ・接点の整理 特定の出来事・感情の分析
目的 顧客体験の全体像把握 意味深い瞬間の理解と解釈
データの種類 タッチポイント、感情スコアなど ユーザーの語り、エピソード、感情の起伏
主な手法 ワークショップ、ペルソナと組み合わせ インタビュー、ナラティブ分析
分析の深さ 広く浅く 狭く深く

事例

▶ 医療機関のサービス改善(国内事例)

背景:あるクリニックで「患者満足度は悪くないが、再来率が伸びない」との課題。
施策:退院後の患者インタビューを通して、印象に残った瞬間を語ってもらうクリティカルジャーニーを実施。
発見:

  • 医師の説明ではなく、受付スタッフの対応が強く印象に残っていた
  • ネガティブな瞬間も、フォローの一言で印象が好転していた

成果:

  • 接遇研修をスタッフ向けに強化
  • 挨拶の徹底やメッセージカードの導入(「お大事に」の一言「何か不安があればいつでもお電話ください」のメッセージカードなど)

→ 再来率が改善、顧客満足度も向上

▶モバイルバンキングアプリでの例

友人への送金のジャーニーで、[1. アプリにログイン 2.「送金」へ移動 3. 受取人を選択 4. 金額を入力 5. 確認して送金 6. 確認を受け取る]のいずれかのステップで失敗したり混乱が生じたりすると、ユーザーはタスクを放棄し、アプリへの信頼と価値の両方に影響を与える可能性がある。

ワークショップでの使い方

目的

参加者(顧客・社員・関係者)が語る「印象に残った体験」の背景を探り、サービスの改善やブランド価値の本質を発見する。

準備するもの

  • 付箋
  • インタビューガイド(聞き手用)
  • タイムライン用の大きなシート or ホワイトボード
  • 感情曲線を描くためのツール(シールやペン)

進め方ステップ(例:90分)

  1. ウォームアップ(10分)
    体験テーマを共有(例:「この病院を使ったときに印象に残ったこと」)
  2. ストーリーテリング(20分)
    ペアになってお互いの「印象に残った出来事」をインタビュー形式で語る
  3. 感情の山谷をプロット(15分)
    語られたエピソードをタイムラインにし、感情の動きを可視化する
  4. クリティカルモーメントを特定(15分)
    一番感情が動いた瞬間を選び、なぜそれが起きたか、何が要因かを深掘り
  5. 共有と考察(20分)
    全体で共有し、共通点や気づきをまとめる

まとめ:使いどころのヒント

  • クリティカルジャーニーは「感情が大きく動いた瞬間」に注目するリサーチ手法
  • 全体の構造ではなく、深い意味や背景を掘ることに長けている
  • ユーザーの本音や意図を深く理解したいときに有効
  • カスタマージャーニーマップと組み合わせることで、より強力なインサイトが得られる
状況 活用のヒント
数字や分析では見えない“なぜ”を探したい ユーザーの感情に潜む意味を知るために
顧客体験が感情的に語られることが多い業界 医療・教育・介護・金融・公共機関など
チームの共感力や洞察力を高めたい ワークショップで体験共有を通じて実感させる

UX DAYS TOKYO オーガナイザ/デジタルマーケティングコンサルタント 著書 ・ノンデザイナーでもわかる UX+理論で作るWebデザインGoogle Search Consoleの教科書 毎年春に行われているUX DAYS TOKYOは私自身の学びの場にもなっています。学んだ知識を実践し勉強会やブログなどでフィードバックしています。 UXは奥が深いので、みなさん一緒に勉強していきましょう! スローガンは「早く学ぶより深く学ぶ」「本質のUXを突き止める」です。

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