霊長類が親密なグループを築くには、大脳皮質の大きさに関係し、人間が円滑に安定して維持できる関係は150人程度だという理論。
起源
1993年、英国の人類学者ロビン・ダンバーは、霊長類の脳の大きさと、群れの大きさとの間に相関関係を見出した。その研究を人間の脳の大きさに当てはめて計算した結果、人間が円滑に安定して維持できる関係は150人程度であると提唱した。提唱者の名前から、ダンバー数と名付けられた。
ダンバー数は、霊長類が親密なグループを築くとき、その規模は大脳皮質の大きさに関係するという仮説から導き出されている。
150という値がよく用いられるが、実際にはバラつきがあり100から250の間であろうと考えられている。
猿の群衆行動が起源
学説のきっかけとなったのは、猿の社会性の研究であった。猿はグループで行動する社会的動物であり、毛じらみを取り合うことで社会的に触れ合う。そこで、教授は猿のグループの規模と毛じらみを取る時間と脳の大きさの関係性を調べた。
その結果、毛じらみを取る時間が長く、一緒に生活するグループの規模大きな猿ほど、脳が大きいことがわかった。
集団生活するためには「頭脳を使わなくてはいけないのではないか?」「集団生活をすることで頭脳が発達するのではないか?」という仮説を元に、猿のデータを人間に当てはめ、人類の平均的な脳の大きさから、安定した社会関係を維持できるとされる人数は約150人であると結論付けた。
親密度における人間関係の階層
ダンバー数は、知り合いであり、かつ社会的接触を保持できている人のことで、社会的交流が途絶えた知人はその数に含まれない。また、人間関係にも階層があると教授は述べており、以下のようになる。
- 第0階層:3~5人(危険な時に駆けつける、お金の相談をする、助けを乞う、秘密を打ち明けれるとても親密な友達)
- 第1階層:12~15人(月に1回程度会うような親密な友達。「シンパシーグループ」と呼ばれる)
- 第2階層:45~50人(距離のある友達)
- 第3階層:150人(友達の限界であるダンバー数)
(参考:Are social networks ruining our real friendships?)
ダンバー数の実例
「150人」の数字の実例として、以下のようなものが挙げられる。
- 狩猟採集社会での、村や、氏族(クラン)の平均人数は153人
- 毎年クリスマス・カードを送る相手とその家族を合計した人数の平均は154人
- アーミッシュ(ドイツ系移民の宗教集団)は一つの共同体の構成員が150人を超えると共同体を分ける。
- 新石器時代での村の住民数は120~150人
- ビジネスで、効率よく仕事ができる組織の人数は150人前後
- 軍隊での中隊(最小の独立部隊)の人数は150~200人
- 学術上の一つの専門分野における学者の数の上限は200人
(参考:「友達の数は何人?―ダンバー数とつながりの進化心理学」)
ダンバー数の応用
防水透湿性素材で有名なゴアテックス(ゴア・アソシエイツ社)の創業者ウィルバート・ゴア氏は、グループが150人以下であれば明確な規範がなくても従業員は同じ目標へ向かって努力するが、150人を超えると問題が発生することを経験から学んだ。そこで、各部門の従業員数が150人以下になるように、人数が増えすぎたら部門(工場)を分割するという戦略を取っている。
また、Facebookと似た機能を人数限定で公開するSNSアプリ「Path」もダンバー数を応用している。当初は、アプリで繋がることの出来る最大人数は50人だったが、後にダンバー数を元に、150人に引き上げられたとされている。