自分の力量や能力を客観視できないことから起きる認知バイアスで、自分自身を客観的に観察する能力である「メタ認知」の不足により起きる効果である。
能力の低い人が自己評価を高く見積もることだけではなく、能力の高い人が自分にとって簡単なタスクは他の人にとっても簡単であると考え、自己の能力も過小評価することもダニング・クルーガー効果である。
ダニングクルーガー効果は1999年にコーネル大学のDavid DunningとJustin Krugerが策定した。
知識や経験が少ないと自己評価を誤る
知識や経験が少なければ、仕事がうまく進むかどうかなどを正確に推定することはできない。正しい答えを出すためには、その分野の客観的な評価基準を知っている必要がある。
自分の能力が低い場合は、評価基準を知らないので自分の能力を高く見積もってしまう。能力について実際に訓練を積んだ後であれば、自分の能力の欠如について認識できるようになる。
ダニング・クルーガー効果の例
大富豪になる確率が高いと判断したアメリカ人
アメリカでの調査によると、アメリカ人の21%は、10年以内に大富豪になることを「非常に可能性が高い」または「かなり高い」と信じている結果が出た。とある企業ではソフトウェアエンジニアの32〜42%が自分のスキルを企業内の上位5%と評価した。
自分が簡単にできることは他人もできると考えてしまう
webやアプリなどの制作者が、ユーザビリティテストをせずに「ユーザーにとっても操作が簡単である」と考えてしまうことがある。自分たちにとって簡単であることは他人にとっても簡単であるというダニング・クルーガー効果だといえる。
能力を客観視できないと作業時間を見誤る
経験の少ない分野の作業で、自分の能力を客観視することができずに作業時間の見積もりを誤ることがある。結果的に見積もった作業時間よりも実際の作業時間がはるかに多くなってしまう。
文化による動機の違い
研究や実験は北米の被験者を対象に行われることがほとんどであったが、ダニング・クルーガー効果は、文化によっては当てはまらないことがある。東アジアなどの異なる文化圏においては社会的影響から異なる選択肢を作るためである。
自分を過小評価することが多い東アジア文化
東アジア文化は、自己を過小評価することで人間関係を円滑に保つきらいがある。
北米の被験者は、バレーボールをうまくできない場合他のスポーツをする、というように代替選択肢を探す傾向にある。
東アジアの被験者はうまくできなかったとしても、自分の能力が低いことが原因であると考え、自分の成長の過程として受け入れる傾向にある。
コミュニケーションの面においても、東アジア文化は自己を過小評価することを人間関係を円滑に保つために利用している。日本では「謙虚」「謙遜」など、自己の能力を誇示しないことが社会通念上、美徳とみなされることを理解しておく必要がある。