テストなど記憶が試されるときは「頑張って覚える」→「テストまで忘れない」→「テスト本番で思い出す」という3段階を踏む。
認知心理学では3つの段階を符号化(記銘)、保持(貯蔵)、検索(想起)といい、感覚器官から得た情報を「頑張って覚える」までのプロセスが符号化に該当する。
符号化には意図的に発生させる場合と無意識に発生する場合があり、意図的な符号化の方が思い出しやすい。思い出すことを再認という。
符号化の工夫
符号化の際、何らかの工夫をすると記憶しやすくなる。代表的な方法として精緻化、生成効果、分散効果があり、近年取り上げられることが多くなったものとしてサバイバル効果がある。
精緻化
覚えるべき情報に語呂合わせやイメージなど関連する別の情報を付け加えて、思い出す際の手がかりを増やすこと。
「白紙(894)に戻そう、遣唐使」のように語呂合わせを作って覚えることで、年号そのものを思い出せなくても、語呂合わせを手がかりに思い出すことが可能になる。
生成効果
覚えるべき情報に関連する情報を生成し、自分のスキーマ(似たような知識の集まり)に合致した情報を符号化する。
絵画を見る時にただ見るのではなく、「この絵は近所にある公園に似ている」というように解釈を考えると記憶しやすくなる。
分散効果
覚える時に一定の間隔をあけると集中して覚えるよりも有効である。根拠については様々な仮説があるが、機会を分散して情報に触れるほうが様々な形で符号化され、記憶情報の検索手がかりが増えるためと考えられる説が代表的である。(符号化変動仮説)
単語などを覚える時に、1時間集中して覚えるよりも休憩を挟みながら覚えた方が忘れにくい。
サバイバル効果
無人島生活や山岳での遭難などサバイバル場面にいることを想像し、サバイバルに役立つか判断するように求められると単に意味や感情判断をすることに比べて記憶成績が向上するという効果。
記憶を進化や適応という観点からとらえることで、生起メカニズムが想定されている。
符号化したときの状況を再現すると思い出しやすい
財布を無くしてしまった時に状況を再現すると、どこで無くしてしまったかを思い出すことがある。符号化したときの手がかりと検索時に利用できる手がかりが一致すると記憶が再生されやすい。
このことを符号化特定性原理といい、人間の記憶研究についての世界的権威のひとりである心理学者のEndel Tulving氏が提唱した。同じく心理学者のGodden氏とBaddeley氏が1975年に単語の学習を陸上で行うグループと、水中で行うグループに分けて実験を行った。学習場所とテスト場所の組み合わせを「陸上で学習ー陸上でテスト」「陸上で学習ー水中でテスト」「水中で学習ー陸上でテスト」「水中で学習ー水中でテスト」の4通りで実施したところ、「陸上で学習ー陸上でテスト」のように学習とテストの環境が一致していた方が良い結果を得られた。