ユーザーの行動は、コンテキスト(周りの環境)からの影響されることがありますが、自然な状態であることでユーザーに余計な影響を与えないことが特徴です。元々は、ギリシャ語のエスノス(人々、国民)とグラフォ(私が書く)が足された言葉で、1800年代に文化人類学や心理学における、人々と文化についてのシステムについて学習する調査として確立しました。対象を社会的や文化的に観察することが目的です。
UX/UIにおいてエスノグラフィー調査は、対象者が自然な体験を元に分析を行うことができるとしています。これは、仮説を元に検証するリサーチ手法とは対称的な手法となります。
エスノグラフィーの有効性
エスノグラフィー調査は、その手法から幾つかの特定の問題を解決することができます。
ユーザーの本当の利用状況を把握する
私たちはプロダクトやサービスを設計する場合、ユーザーがどのように利用するのかを考えて設計をしますが、そもそもユーザーがそのサービスをどのように利用するのか予想がつかない場合、もしくは本当に設計と同じように利用しているのか知らべたい時に利用します。
- 複数のサービスをどのようにユーザーが利用しているのか知りたい時
- プロダクトやサービスの問題を特定・解決出来ない時
エスノグラフィーで期待できること
- 自分自身が被験者として日常生活にとけこみ、ユーザーとの関係の中で長いスパンで観察できる。
- 視覚データとして顕在化していないユーザーのニーズを捉える。
- 日常の異なるコンテキストの行動を捉える。
- 実生活からデータに直面して、様々な関係性を見出す。
- 統計の裏側で起きているユーザーの行動を理解できる。
エスノグラフィー調査における留意点
エスノグラフィー調査は、ただ人間を観察するものではなく、いくつかのメソッドがあります。
- 三角測量(Triangulation)
- 参加型観察(Participant Observation)
- フィールド・ノート(Fieldnote)
三角測量(Triangulation)
三角測量(Triangulation)は、データを複数のソースから集めることの意味です。「1観察」「2インタビュー」「3定量データ」などと組み合わせて分析することで何が本当に起きているのかを分析します。
参加型観察(Participant Observation)
被験者を観察するには観察者は自身をその環境に埋め込み観察します。その際に、段階的に「被験者とチームになって行動する人」「被験者とは距離をおいて行動する人」「被験者と距離を遠くもなく近くもなく保つ人」と設定おいて観察をします。
フィールド・ノート(Fieldnote)
エスノグラフィー調査では、ノートへ観察したことを記録する。見たもの、聞いたもの日記のように書くこと、ログを書くことが大切です。
Thick description(厚い記述)
「Thick description」は、Clifford Geertz(クリフォード・ギアツ)という、社会人類学者によって紹介されました。
もし、ウィンクをしたということをレポートしたとき、その肉体的な動作だけを記述するのではなく、ウィンクをすることで、誰かとコミュニケーションをとっている、話の意味がわかったということを示している、のように読み取ることもできます。
しかし、このウィンクの意味は文脈(コンテキスト)によって決まります。調査内容をノートを記述する時には、コンテキストによって記述内容が変わる場合は、それについても記述する必要があります。そのことを「Thick Description」と呼びます。
- Benefits of Ethnography
http://www.experienceresearch.com/benefits-of-ethnography/ - Thick Description
https://en.wikipedia.org/wiki/Thick_description