他人が経験している楽しいこと、価値あることを自分が見逃してしまっているのではないか、取り残されてしまうのではないか、という不安・焦燥感を指す心理現象。FOMOは、Fear of Missing Outの略で、フォモと呼ぶ。
特にソーシャルメディアの発達によって、他者の生活が可視化されやすくなった現代において、FOMOは強く感じられるようになった。
提唱者
用語を広く知らしめたのは、Patrick J. McGinnis 氏であり、2004年にハーバード・ビジネス・スクールの学生誌 The Harbus に掲載されたコラムにおいて「FOMO」という語を初めて使用した。
Przybylski ら (2013) は FOMO を「他者が有益な経験をしている可能性に取り残されることへの遍在的な不安」と定義している。
デザイン上の利用方法と具体的な事例
利用方法(デザイン視点)
FOMO は UX やプロダクト設計の文脈で、ユーザーを行動に誘導するトリガーとして使われる。だが、その使い方には倫理的配慮が求められる。以下が主な観点である。
-
限定性・希少性の提示
「残りあと○個」「期間限定」「先着順」「今日限定オファー」などの表示を加えて、ユーザーに「今行動しないと機会を逃してしまう」という感覚を与える。 -
社会証明・他者の行動表示
「〇人がこれを見ている/買っている」「人気のコンテンツ」などを可視化し、他者がアクティブにしていることを示す。 -
進捗や成果を可視化
例えばオンラインコースで「他の学習者の進捗」「あなたの順位」などを見せ、遅れを感じさせることで学びを促す。 -
通知・リマインダー
セール終了間近やイベント開始直前のリマインダー通知を送って、ユーザーを引き戻す。 -
時間制限オファー + 行動誘導
タイマーを表示して、残り時間を意識させる設計。
ただし、過度な FOMO 活用は「ダークパターン(暗黙的強制・操作的設計)」と批判されうるため、誠実さ・透明性を担保することが重要である。
具体的な事例
- Eコマースサイトにて「残り 2 点」「あと10人がカートに入れています」などを表示することで、購入を即決させる。
- チケット販売で「早割終了まであと○時間」カウントダウンを表示する。
- オンライン学習サービスで「あなたの学習ペースは他の受講生より遅れています」などの進捗比較を見せる。
- イベントアプリで「今、〇〇人がこのイベントページを見ています」というリアルタイム人数表示。
- コンテンツプラットフォームで「あと○時間で公開終了」または「限定公開」などの表記。
たとえば、UX 記事では、FOMO を取り入れた UX パターンとして「限定ボタン」「残り時間表示」「人気ランキング表示」などが紹介されている。
メリット・リスク
| 利点 | 説明 |
|---|---|
| 行動促進 | ユーザーの行動を後押しし、コンバージョン率を向上させやすい。 |
| エンゲージメント向上 | 継続利用やリピートを誘発できる。 |
プロダクト・コンテンツデザインでの応用シーン
- 初回登録促進:無料トライアル枠を「残り○枠」として表示し、登録を促す。
- サブスク更新促進:期間終了通知画面で「あと○日で自動更新」や「更新割引期間残り時間」を表示する。
- イベント/ウェビナー集客:参加者数や残席数をリアルタイムで示して「参加しよう」という動機づけ。
- A/Bテスト/限定キャンペーン:特定ユーザーに対して限定版 UI を提供し、「限定告知」を行うことで反応率を測る設計実験。
- コンテンツ配信:限定配信+期限付き閲覧を設けて、見逃しを恐れるユーザーを引き戻す設計。
例えば、ある SaaS プロダクトは、初回ログイン時に次のような通知を出す:
「あなたのアカウントは今だけ限定機能を体験できます(あと24時間)」 → これが FOMO を利用した UX である。