もともとは電子機器・ソフトウェアなどで発生する「一時的な不具合・故障・誤動作」のことを指すものである。比較的小さな、予期せぬ誤りやノイズを含む現象を指して使われることが多い。
デザイン/芸術分野では、こうした「技術的な誤動作」を意図的に表現に取り入れ、視覚的なゆらぎ・ノイズ感・歪みを演出する美学として「グリッチ・アート(Glitch Art)」というジャンルもある。
デザイン上での活用方法と具体的な事例
利用方法
- ノイズ表現・強調表現:きれいすぎるデザインではつまらない印象になり得るため、グリッチ効果を部分的に入れることで「デジタルらしさ」「刺激性」「破壊性」「未来感」を演出できる。
- 注意誘導:静的な画面の中で部分的にノイズや動きを入れることで、ユーザーの目を特定の領域に誘導する。
- スタイル表現:ブランドやコンテンツに「デジタル/サイバーパンク/実験的」な雰囲気を与えるために用いられる。
- 遷移・エフェクト:画面遷移時やローディング時に、部分的な歪みやズレの演出を入れて“壊れそう”な印象を与えるインタラクション表現。
具体的な事例
- Webサイトのヒーローセクションで、背景の画像にグリッチアニメーションをかぶせて未来的・破壊的な雰囲気を演出。
- 音楽や映像コンテンツで、映像が途切れるようなノイズを挿入してサウンド体験と同期させる。
- ゲーム UI で、エラーやバグをテーマにした演出(例えば、画面がちらつく、ピクセルが崩れる、色がズレる)を入れる。
- 広告やプロモーションビジュアルで、完璧すぎない「壊れた美しさ」を強調するデザインに利用。
起源(芸術運動として)
グリッチという単語をデザイン・芸術表現に取り入れた「グリッチ・アート(Glitch Art)」という潮流は、明確な “提唱者” が一人であるわけではない。ただし、電子技術・実験芸術・デジタルメディアアートの文脈で多数の先行例がある。
- 先駆的には、テレビ映像を磁石で操作した Nam June Paik の作品などが、不具合的な視覚表現を芸術に取り入れた初期例と見なされることがある。
- 近年では Rosa Menkman などが「グリッチ・アート理論」の議論を深めている。