情報を簡単に検索できる環境にあると、人はその情報自体を記憶するのではなく「どこで調べればよいか」を記憶する傾向を指す現象である。
別名「デジタル健忘症(digital amnesia)」とも呼ばれる。
つまり、情報がインターネットに保存されていると信じられるため、脳はその情報を「覚える必要がない」と判断し、検索手段の方を優先的に記憶するのである。
提唱者
この効果は、コロンビア大学の心理学者ベッツィー・スパロウ(Betsy Sparrow)らの研究(2011年) によって報告された。
彼女は実験により、人々が事実そのものよりも「情報の所在」を記憶することを明らかにした。
デザイン上の利用方法と具体的事例
利用方法
- UX設計においては「すべてを記憶させる」のではなく、情報へのアクセス経路を明確にするデザインが有効である。
- ナビゲーションや検索性を高めることで、ユーザーは「ここに行けば答えがある」と学習し、安心感を得る。
具体的事例
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サポートサイト
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FAQの全情報を覚えてもらう必要はなく、「問い合わせたいときに検索すればすぐ答えが見つかる」と思える構造を提供する。
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教育アプリ
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学習者に「全て暗記させる」のではなく、「公式ソースを探せる力」を重視したUI設計を行う。
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社内ナレッジシステム
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社員が手順を覚えるよりも「どこにマニュアルがあるか」をすぐ確認できる設計が有効である。
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プロダクト・コンテンツデザインの観点での応用シーン
- 検索性の高いUI設計:情報を網羅させるよりも、素早く探し出せる体験を重視する。
- リンク構造の明示:ユーザーは経路を記憶する傾向があるため、パンくずリストや関連リンクを活用する。
- リテンション設計:記憶に残らないからこそ、プッシュ通知やリマインダー機能を補助として組み込む。