分が強く支持している立場に関する報道や情報を「中立的」であっても、自分の立場に不利で敵対的に描かれていると感じてしまう認知バイアスのことである。
人々は客観的な報道やデータを前にしても、自分の信念や立場を基準に解釈するため、「相手に有利に偏っている」と認識しがちである。
提唱者
この概念は、アメリカの研究者 ロバート・バローン(Robert P. Vallone)、リー・ロス(Lee Ross)、マーク・レッパー(Mark R. Lepper)らの研究(1985年) によって初めて体系的に提唱された。
彼らはレバノン内戦に関する報道を題材とした実験を行い、イスラエル支持派・アラブ支持派の双方が「報道は相手側に有利だ」と感じる傾向を明らかにした。
デザイン上の利用方法と具体的事例
利用方法
- 敵対的メディア認知は「人は同じ情報を見ても立場によって異なる偏りを感じる」という洞察を与える。
UXやコンテンツデザインにおいては、ユーザーの立場を考慮した「中立性の伝え方」や「多角的な視点を提供する仕組み」を設計する際に重要である。
具体的事例
ニュースアプリ
- 同じトピックについて、複数の視点から記事を並列表示する(例:リベラル系・保守系両方の記事を提示)。
- 「立場による違い」を可視化することでユーザーの自己反省を促す。
SNSプラットフォーム
- 意見の異なる人々がコメントを見た際に「この投稿は偏っている」と感じるのを軽減するため、ファクトチェックラベルや第三者レビューを添える。
社内コミュニケーションツール
- プロジェクトの報告文やプレゼンテーションで「特定部署の利益に偏っている」と認知されないよう、複数部署の視点を事前に反映させる仕組みを導入する。
プロダクト・コンテンツデザインの観点での応用シーン
- 多様な立場のユーザーが使うサービス(ニュース、SNS、コミュニティ)では必須である。
- 企業のステークホルダー報告においても、株主・従業員・顧客がそれぞれ「自分に不利に書かれている」と感じやすいため、バランスのとれた提示が必要である。
- 教育コンテンツでは、複数の立場を比較し「なぜ人は偏りを感じるのか」を学習させる設計ができる。