プロダクト開発や施策の優先順位付けを行う際に用いられる評価手法で、評価は3つの要素で構成されている。それぞれを数値化し、掛け合わせてスコア化することで、実施すべきアイデアや施策の優先順位を定量的に判断できる。
ICEフレームワークの3要素
要素 | 説明 |
---|---|
Impact(インパクト) | 施策によってどれだけ大きな効果をもたらすか(例:ユーザー数や売上への影響)。1〜10などで評価する。 |
Confidence(確信度) | そのインパクトが本当に得られるという自信の度合い。データや過去の実績があるほど高いスコアとなる。 |
Ease(実行の容易さ) | 実施にかかるコストや時間、労力の少なさ。簡単に素早く実行できるものほど高得点とする。 |
ICEフレームワークの計算方法と例
ICEスコア = Impact × Confidence × Ease
施策案Aのスコア
Impact Confidence Ease ICEスコア
9 × 5 × 3 = 135
ICE フレームワークを使用する理由
他の優先順位付けフレームワークと同様に、スコア自体にはほとんど意味がありません。
ICE優先順位付けを使用する目的は、以下のとおりです。
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思慮深く、構造化され、偏見のない方法でアイデアを評価する
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他のアイデアと簡単に比較できる機能を提供する
デザイン上の活用方法
UXデザインやプロダクトデザインにおいてICEフレームワークは、次のような場面で活用できる。
1. ユーザーリサーチから出たアイデアの評価
インタビューや観察から得られた複数の改善案を、インパクト・確信度・実行容易性でスコアリングし、最も効果的かつ現実的な施策から取り組むことができる。
2. A/Bテストのテーマ選定
限られたリソースの中でどのテストを行うかを判断する際、ICEスコアで評価することで、成果が期待できて素早く検証可能な仮説に集中できる。
3. デザインスプリントやMVPの機能優先順位付け
スプリントで出た多様なソリューションの中から、「試す価値があるもの」を選ぶ基準としてICEを活用することができる。
具体的な事例
あるSaaSプロダクトにおいて、次の3つの施策案が出たとする。
施策内容 | Impact | Confidence | Ease | ICEスコア |
---|---|---|---|---|
新機能Aの追加 | 9 | 5 | 3 | 135 |
フォームUIの簡略化 | 6 | 8 | 7 | 336 |
ログイン後のガイド改善 | 7 | 7 | 8 | 392 |
この結果から、ログイン後のガイド改善を最優先とし、フォームUIの簡略化、新機能Aの追加と進めていくのが合理的である。
提唱者と背景
ICEフレームワークは、Sean Ellis(ショーン・エリス)によって提唱された。
彼は「グロースハッカー」という概念を広めた人物であり、DropboxやEventbriteなどの企業でグロースの手法を実践した経験を持つ。
「ICEフレームワーク」と「ICEスコアリングモデル」の違い
同一のものとして扱われるが、文脈によっては以下のような違いがある。
チームで議論しながら優先順位を決めるための思考の軸・言語化には、ICEフレームワークを用いて、定量的に施策を整理・記録・共有したいする場合は ICEスコアリングモデルをシートベースで行う。
観点 | ICEフレームワーク | ICEスコアリングモデル |
---|---|---|
用語のニュアンス | 手法・考え方の体系を強調 | スコア算出プロセスを強調 |
主な用途 | プロダクト開発やUX施策の企画段階 | スプレッドシートやツールでの具体的な評価作業 |
実装方法 | ディスカッションベースで使うことも多い | ExcelやNotion、Airtableでの定量管理に向く |
スコア計算 | Impact × Confidence × Ease(乗算が一般的) | 一部では加算式(I+C+E)を使うケースもある |