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情報バイアス information bias

意思決定や判断を行う際に、実際には意思決定に有効ではない情報に過剰に注目し、それによって誤った判断をしてしまう心理的偏り

「より多くの情報=よりよい判断につながる」と無意識に信じてしまう傾向であり、たとえその情報が無関係であっても「知っておいたほうがよい」と錯覚してしまう。その結果、調査対象からの誤った情報を取得し、合理性のない誤った判断をしてしまう。

提唱者と背景

ダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキー

左:ダニエル・カーネマン、右:エイモス・トベルスキー(出展:http://grawemeyer.org

この概念は、1970年代にダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman)および心理学者、アモス・トベルスキー(Amos Tversky)の研究によって体系化された。彼らはヒューリスティクスとバイアスに関する一連の研究の中で、「情報の過剰取得が意思決定の精度をかえって損ねる」ことを示した。

なぜ情報バイアスが生じるのか

情報バイアスとは、情報の取得または分析の方法に誤りがあることによって生じる偏りである。
その代表的な例として、調査実施者が測定方法を正確に把握していないことにより、誤ったデータが収集される場合が挙げられる。

また、正確な情報の取得が極めて困難な状況も存在する。特にアンケート調査やインタビュー調査においては、対象者の内在的な心理や記憶を正確に引き出すことが難しく、きわめて高度な測定手法を設計したとしても、情報バイアスを完全に排除することは困難である。

情報バイアスの回避方法

情報バイアスを回避するためには、得るべき情報に対して、それをいかに正確に取得するかという観点から、調査方法を客観的に検討することが不可欠である。

その第一歩としては、当該情報を得るための一般的かつ妥当な手法を誤解なく理解することが求められる。次いで、調査・分析の過程で発生しうるバイアスの種類や原因を事前に想定し、それを防止するための調査設計を行うことで、情報バイアスの発生を最小限に抑えることが可能となる。

さらに、現実的に完全な排除が難しいバイアスについては、「調査結果には一定のバイアスが含まれている可能性がある」という前提に立ち、その存在を認識したうえで調査結果を適切に解釈・評価する姿勢が重要である。

デザイン上の活用と具体事例

情報バイアスを避けるデザインアプローチは、UX/UI設計において極めて重要である。

【活用の場面1】ダッシュボード設計

多くの企業向けアプリやSaaSでは、分析ダッシュボードに多くのグラフや数値を表示しがちである。
だが、すべての情報が意思決定に必要とは限らない。むしろ「意思決定に直結する2~3項目」にフォーカスしたミニマルな設計が、行動を促す。

たとえば、売上が低迷している原因を探る際に、閲覧数・在庫数・CV率の3指標に絞る設計が情報バイアス回避につながる。

【活用の場面2】ユーザーフィードバックの表示方法

レビューや口コミをすべて表示するより、「他の人にとって参考になったレビュー」だけを優先表示することが有効である。情報が多すぎると、ユーザーはどれが重要か判断できなくなるため、情報の階層化と優先順位付けが求められる。

【活用の場面3】フォームやアンケート設計

不要な入力項目(例:職業、年収、郵便番号など)を加えると離脱率が上がるだけでなく、「この情報も必要なのでは」と思わせ、余計な判断負荷を与える。

この場面に使える

  • 情報過多に陥りがちな管理画面や設定画面
  • 多機能アプリでの「使う人にとって必要な機能」を選ばせる画面
  • ABテストや調査レポートを上司に説明する際の情報整理
  • 商品比較ページにおける「スペック比較」項目の絞り込み

情報バイアスの具体例

以下に、アンケートおよびインタビュー調査において発生しやすい代表的な情報バイアスを示す。

  • スポンサーバイアス
    調査対象者に報酬やインセンティブを提供することにより、調査実施者に好意的な回答が誘発されるバイアスである。
  • 内集団バイアス
    調査対象者が、自らが所属する集団を他の集団よりも高く評価してしまう傾向を指す。
  • 順序バイアス
    質問の並び順によって発生するバイアスであり、特に前の質問との一貫性を保とうとする心理から、後の質問への回答が影響を受ける「一貫性バイアス」などが含まれる。

情報バイアスとの違い

情報バイアスって何?

集めた情報が間違っていること!

たとえば、「朝ごはんを食べたか」を聞いたのに、「パンをちょっとだけ食べた」人が「食べてない」って答えちゃったらどうなる?
→ 本当は朝ごはん食べたのに、「食べてない人が多い」っていうまちがった結果になるかも!

つまり、質問のしかたがわかりにくかったり、答える人がまちがえちゃったりして、正しい情報があつまらないこと。
これが「情報バイアス(集めたデータの間違い)」。

バイアスの名前 誤りが生じるタイミング・場所 主な原因例
選択バイアス 調査対象の選定時
「だれに聞くか」が偏っている
対象者が母集団を代表していない
ラーメン好きにだけ給食ランキングを聞いた
情報バイアス 情報の取得・記録の過程
「どう聞くか」「どう答えるか」が間違っている
記憶違い、質問の曖昧さ、記録ミスなど
「朝ごはん食べた?」の質問に間違って答えた

関連用語

まとめ

情報バイアスとは、「多すぎる情報によって判断が歪められるリスク」であり、UX/UIデザインにおいては、「絞り込み」と「目的の明確化」がそれを防ぐ鍵となる。
デザイナーやプロダクトマネージャーは、「本当に必要な情報は何か?」を問い続け、ユーザーの判断をサポートする設計を行うべきである。

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UX DAYS TOKYO オーガナイザ/デジタルマーケティングコンサルタント 著書 ・ノンデザイナーでもわかる UX+理論で作るWebデザインGoogle Search Consoleの教科書 毎年春に行われているUX DAYS TOKYOは私自身の学びの場にもなっています。学んだ知識を実践し勉強会やブログなどでフィードバックしています。 UXは奥が深いので、みなさん一緒に勉強していきましょう! スローガンは「早く学ぶより深く学ぶ」「本質のUXを突き止める」です。

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